職場、飲食店やコンビニなど毎日さまざまな場面で会う外国人の力がなくては、私たちの生活は成り立たない。日頃からそう感じているため、7月の参院選で外国人への規制強化や権利制限を強く打ち出す政党に勢いが見られたことに、落ち込んでしまった。

  「東京サラダボウル」は、さまざまな国籍や文化を持つ人々が共存する東京を舞台に、警察官と通訳人が、外国人在住者が絡んだ事件を解決していくヒューマン・サスペンス。

 緑髪の警察官の鴻田は、ある事件を捜査するなかで中国語通訳人の有木野と出会う。鴻田は彼の的確な通訳と元警察官ゆえの鋭さに惹(ひ)かれ、コンビを組まないかと打診するが、有木野は過去の事件が原因で、他者と接点を持つことを拒んでいた。さまざまな事件とそこで出会った外国人や同僚を通じて、価値観や文化の違いを乗り越えた2人の間に友情が芽生えていく。

イラスト:kumiko yamaguchi

 第5話、ある介護施設でベトナム人ケアスタッフを排除しようとする日本人介護士に、有木野の同僚であるベトナム語通訳人が言い放った「外国人を働かせてあげているんじゃない。私たちが彼らに働いてもらっている」が胸を突く。外国人に感謝と言いながら、私にもどこかで「働かせている」という無自覚な差別心があったことに気付いたのだ。

 テーマ曲である、K―POPバンド、バーミング・タイガーの「Wash Away」にはこんな歌詞がある。「冷蔵庫の中に入ってドアを閉める/同じものなんて無い/頭からつま先まで/何もかもが違っていて/みんな悪戦苦闘している」。社会で共生する人間も同じことが言えるだろう。

 「外国人を無理に愛せとは言わない。でも彼らを敵視して排除しようとしても、あなたの居場所は守れない」というセリフがずっと心に残っている。あからさまな排外主義的考えを持つ人はもちろん、差別を許さないと思いながら差別してしまっている人、つまるところ全ての日本人に今作を観て欲しい。

※NHK総合で2025年1~3月放送。全9回。

DJ CHIGON 富山市在住。ロックDJパーティ「LOVEBUZZ」のDJ。インディーロックを中心にプレイしている。