「世界最高のライブバンド」とも称されるスウェーデン出身のガレージロックバンド「The Hives(ザ・ハイヴス)」が7月末、新潟県湯沢町で開催されたフジロックフェスティバルに出演し、荒々しくむき出しのパフォーマンスで観客たちを熱狂させた。
公演の直前、取材に応じたギターのニコラウス・アーソンとドラムのクリス・デンジャラスは「日本のファンは世界で一番さ」と語った。
初来日は2002年。ガレージロックが人気の日本でバンドは熱狂的に迎えられた。クリスは「反応がちょっと普通じゃなかったな。日本人はとても礼儀正しくて、歌の最中は盛り上がってるんだけど、演奏が終わると僕らがしゃべっていることを聞き漏らすまいとするんだ」と振り返る。「ヨーロッパやアメリカなんかとは真逆だね」
日本のバンドにも影響を受けてきたという彼ら。ニコラウスは「いいバンドがたくさんいるよ。『ギターウルフ』はグレートだ。『TEENGENERATE』『少年ナイフ』も聴いていたね。最近だと『おとぼけビ~バ~』も日本のバンドだよね? 彼女たちは“ワイルド”でいいよ」と語った。
「世界最高のフロントマン」とも称されるボーカルのハウリン・ペレ・アームクヴィストはニコラウスの弟。クリスは「彼は音楽への情熱があって、芸術家であり続けて、自分たちのやっていることを心から愛している。ずっと一緒だけど、彼は変わらないね」。ニコラウスは「人は『最も偉大なフロントマン』と呼ぶかもしれないけど、僕らはただ一緒につるんで遊んでいるだけ。子どもの頃と同じさ。時にけんかをして、そのけんかも楽しかったりして」と語った。
8月末にニューアルバム「The Hives Forever Forever The Hives」を発売する。一昨年のアルバムが11年ぶりだったのに、一転して速いペースでのリリース。
クリスはこう語る。「前のアルバムでは、よりパンクに、より生々しくって考えていたんだ。今回はこのバンドでアリーナが似合うロックをやってみよう、ってね。だから、もっとシンプルに、もっと力強く、そんな狙いかな」
どこか集大成のように響くニューアルバムのタイトル。クリスは「別に何も考えてないよ。どんどんアルバムを作って、できるだけツアーをする。僕らは、演奏を聴きたいと思ってくれる全員の前でプレイしたいだけ。次に何をするかなんて考えていない。今回のアルバムはまだリリースもされてないからね。2年かけてツアーをして、次に何をするか考えるって感じかな」
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フジロック3日目の夜、会場で唯一、屋根のあるステージ「レッドマーキー」に、ボーカルのハウリン・ペレら5人が姿を現した。
白いラインの入ったおそろいのブラックスーツに身を包んだ彼らが「ジャーン」と一斉に楽器を鳴らすと、早くもテント内は熱気が渦巻く。
ペレは鋭くたたきつけるような声を響かせながら歌い、マイクをぐるぐる振り回し、飛びはね「19年ぶりのフジロックだ。19年ぶりだぞ」と観客をあおる。お立ち台に駆け上がり、拳を振り上げ、たたみかけるような早口で語るペレは生粋の“アジテーター”。あおられるように観客たちが興奮の度合いを高めていく。
切り裂くようなギターリフ、バリバリとひずんだベースが一体化しつつ、サビの直前には一瞬、無音のタメを挟み、つんのめるように疾走していく。ガレージバンドらしいスピード感で、ヒット曲「Hate to Say I Told You So」や最新曲「Enough Is Enough」などでたたみかける。
いつの間にかジャケットの袖をまくり上げたペレが「No Time to waste(無駄にしている時間はないぞ)」と叫ぶ。ステージはそのままクライマックスへとなだれ込んでいった。
インタビュー動画のリンクは以下の通り。
https://youtu.be/M2UJS0FXwdo?si=kFIGfPjpbULtSs-j
(取材・文 共同通信=團奏帆、森原龍介)