歌舞伎役者の血筋を引かない主人公が頂点に上り詰める映画「国宝」が大ヒットする中、「第31回稚魚の会・歌舞伎会合同公演」が8月14~17日に東京・浅草公会堂で開かれる。国立劇場養成所出身者ら、いわゆる“門閥外”の若手による年1回の本公演も注目され、切符の売れ行きは好調だ。映画の主人公と立場の重なる出演者は「日頃の修業の成果を見せたい」と意気込む。
今回は「双蝶々曲輪日記」「棒しばり」「勢獅子」を上演。「国宝」に刺激を受けた片岡市也は「映画をきっかけに歌舞伎を見る人もいるかもしれない。『こんなものか』とがっかりされないようにしたい」と話す。
市也と共に「勢獅子」の芸者役で踊る坂東家之助は「品の良さと粋の良さを重点に見てもらえれば。もっとわれわれの舞台に来てほしい」。外国人観光客の多い浅草という場所を考え、英語のチラシやイヤホンガイドも準備したという。
普段は師匠たちの演技を補助したり、脇に回ったりする面々が大きな役を担う。40代で、舞台の引き締め役として登場する大谷桂太郎は「苦労しても舞台に立つと『辞めらんねえな』と思う。ずっと勉強し続けられるのが楽しい」と歌舞伎役者の醍醐味を語る。
養成所で後進の指導に携わる市川新十郎は「公演を見た人が、自分も歌舞伎をやってみたいと思ってくれたら」と将来の“国宝”候補にアピールしている。