「このメールへの返信を考えて」と頼むと、すぐに文章を書いてくれる生成AI。その便利さから日常に溶け込みつつあるが「仕事が奪われるのではないか」といった懸念はいまだ根強い。期待と不安が入り交じる中、創作の現場でもAIへの向き合い方が問われている。

 国内最大級の投稿サイト「note(ノート)」は今年、AIとの共存に向けた取り組みを始めた。投稿文をAIの学習データとして企業側に提供する代わりに、noteを通じて書き手が対価を得られるようにするもので、なかには40万円を受け取った人もいる。

 CEOの加藤貞顕(かとう・さだあき)さんは「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(岩崎夏海著)などのベストセラーを手がけた編集者でもある。創作と技術、両方の世界をよく知る人はどんな未来を見ているのだろう。気になって都内のオフィスを訪ねた。(共同通信=中川亘)

作品を無断使用?クリエーターに納得を

 noteは小説やエッセーなどを無料で公開したり、有料で売ったりできるサイトだ。投稿数は年間1000万件規模に上る。

 noteは2月から、AI学習と対価に関する実験を重ねてきた。参加するかどうかは書き手が選べるようにし、対価の金額は文章の構成や専門性、閲覧数などから独自の計算手法で導き出した。8月からこの取り組みを本格化させる。

 背景には著作権法のあり方がある。

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