今年発表された各国の男女平等度を順位付けした「男女格差(ジェンダー・ギャップ)報告」で、日本は148カ国中118位だった。2024年版と同順位。格差解消のペースは平均以下で、先進7カ国(G7)の最下位にとどまり、格差改善が大きな課題となっている。一方、フィンランドは国連の「幸福度」ランキングで上位の常連国として知られ、男女平等度は世界2位。

 そもそもなぜ女性の活躍は大事なのか。フィンランドのストゥブ大統領の妻というファーストレディーでありながら、昨年9月から大学で教えるスザンヌ・イネスストゥブさん(55)が来日した際に答えてくれた。フィンランドの幸福度の高さにも影響しているという。(共同通信外信部=伊東星華)

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満足感

 「ハッピネス」はフィンランドでは満足感を指します。パーティーを開いて楽しいという感覚ではなく、自分自身が置かれた環境に心が満たされていることです。平等で、セーフティーネットがあってワークライフバランスも取れ、さらに個人が尊重される社会の在り方が満足感を作り出すのです。

 フィンランドでは平等とは差別をしないことを指し、なりたい自分になれる機会が誰にでも保障されることを目指しています。フィンランドでは世界に先駆けて1906年に初めて女性の被選挙権が認められました。そして今は数カ月間の育児休業を取得して子どもと過ごすのが若い男性の間で当然のように受け止められています。私の元同僚の男性たちは子どもが1、2歳になったら育休を取得して子どもとの時間を大事にしていました。こういうことはフィンランドでは当たり前なのです。

 平等は会社の中でもみられます。若手社員でも上司や最高経営責任者(CEO)に自分の意見を話すことができます。そこまで上下関係の厳しい社会ではないのです。

 私自身、かつて法律事務所で働いていた時、産休育休を数年間取った女性が復職し、やがて事務所長にまで上り詰めた事例を見ました。だから女性として自らの働き方を見いだすことは可能だし、出世できるものだと思います。

多様性

 昨年から大学で企業法を教え始めました。フィンランドでは法学を専攻する女子学生の数が男子学生を上回っています。理系科目でも女子学生が増えていて、もうすぐ男女半々になるところです。フィンランドは理系分野で活躍する女性をもっと増やそうとしています。なぜでしょうか。

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