山形県が全国生産の7割を占め、収穫量日本一を誇る愛らしい果物、サクランボ。その「サクランボ王国」で栽培が始まってから、今年でちょうど150年を迎えた。

 お祝いムードの一方、近年の山形のサクランボ栽培は気候変動との闘いだ。昨年は異例の猛暑で「歴史的な凶作」。今年の収穫量の見込みも平年を下回り厳しい予想となっている。

 農家や関係者はこの150年間、必死に試行錯誤を繰り返してきた先達に思いをはせながら、産地日本一を守ろうと知恵を絞るが…。(共同通信=中村茉莉)

 ▽猛暑や大雨に翻弄され

 「日本一の産地であり続けられるよう、関係者の声を聞きながら早急に検討したい」。今年6月、山形県の吉村美栄子知事は、JA山形中央会の副会長から、安定生産に向けた資金支援を緊急要請され、厳しい表情で応じた。

 サクランボ栽培についてのJAの緊急要請は昨年に続き2回目。副会長は、収穫量減で経営が悪化し、高齢の農家が老朽化した設備や機械を更新できずに営農を断念する実情があると説明した。

 県の調査によると、今年の収穫量の見込みは8600トン~9700トンと、平年より少なめの予想。開花時期に当たる4月中旬~5月上旬に強風と雨が響いた上、5月末にも雨で実が割れてしまう被害があったためだ。加えて6月も高温が続いたため、さらに収穫量が落ち込む可能性がある。

 ▽返礼品も確保できず

 昨年は、収穫最盛期の6月に30度を超える暑さの日が続き、収穫量は平成以降で2番目に少ない8590トンと記録的な不作に沈んだ。

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