福岡県に住む30代の男性は中学時代、他人の家でのぞき行為をしてしまった。次第にエスカレートし、その後社会に出てストレスを感じると、衝動が増幅して常習的に住居侵入や盗撮を繰り返すようになった。そして2023年、警察から聴取を受けた。
男性は妻に相談し、治療を受けることにした。取り組んだのは、心理療法の一つ「認知行動療法プログラム」。これは、出来事の捉え方を変えることで、そこから生まれる感情や行動をコントロールしようというものだ。
被害者の尊厳を傷つけ、「魂の殺人」と呼ばれる性犯罪。再犯防止のため、受刑者らが心理療法を受けられる制度は国も導入しているが、その網は狭く、治療を受けられず再犯に走る例は多い。「日本では、加害者に“反省させる”ことを重視している」という見方や、効果に懐疑的な研究もある。事件を起こさせないために効果的な方法は何か、関係者の試行錯誤が続く。(共同通信=江浪有紀)
▽「どうでもいいや」感情を制御できず、性犯罪に
2024年7月、西日本の裁判所で、少女と性交した罪で起訴された元自衛官(38)の裁判が開かれた。2022年に当時の勤務地で同じような事件を起こして罰金刑に処されたが、半年後にまた別の県で犯行に及んでいた。
被告は、検察から動機などを問われてこう答えた。「自暴自棄になり『どうでもいいや』となった」
仕事のストレスで精神状態が不安定になり、投薬治療を受けていたという。ただ解決に至らず、心理的影響から事件を起こしたとみられる。元自衛官は性的嗜好を自覚し、臨床心理士による治療を受け始めた。