テレビ離れが進み、ラジオを聴く人も減る中、市場の小さい地方局の経営は、東京のキー局よりも厳しさを増している。しかし、地方局は地域情報を伝える大きな役割を果たしており、その力が落ちれば住民の「知る権利」が損なわれる。地方局はどうやって生き残りを図るのか。放送界の論客として知られる鹿児島県の南日本放送(MBC)相談役の中村耕治さん(75)に尋ねた。(共同通信編集委員・原真)

ふるさとたっぷり

 MBCはテレビ・ラジオを兼営するTBS系列の局だ。従業員は約110人で、2023年度の売り上げは約49億円。典型的な地方局といえる。経営の現状はどうか。社長や会長を歴任した中村さんは言う。

 「ローカル局は、インターネットの発達をはじめとするメディア環境の変化と、地域の人口減・過疎化という二つの問題に向き合っています。広告収入はコロナ禍前に戻っておらず、今後も増えることはないでしょう」

 実際、若い世代はスマートフォンでSNSなどに接するのが、メディア利用の中心になっている。一方、かつて200万人を超えていた鹿児島県の人口は、約153万人にまで減った。

 

 ただし、どちらも最近始まったことではない。中村さんが激変を予感したのは、30年ほど前だ。放送のデジタル化によって、全国で視聴できるBS放送が増えることになった。世界中で情報が飛び交うネットも登場した。足元の鹿児島県内では、ケーブルテレビやコミュニティーFMが次々に開局していく。

残り2255文字(全文:2870文字)