富山県同様、すしを軸とした観光振興や地域活性化に取り組む北九州市の武内和久市長が12日、県庁を訪れ、新田八朗知事と初めての「すし会談」を行った。両首長は富山から北九州に至るルートを「すしのゴールデンルート」と名付け、JR西日本など民間企業を交えながら人的交流や互いの地域振興に努めていくことで一致。互いを「ライバルではなく同志」と表現し、8月に大阪で両自治体合同のイベントを開催することも申し合わせた。

 富山県は「寿司(すし)といえば、富山」をキャッチフレーズに、富山の認知度を高めるため、すしを軸に2023年からさまざまな取り組みを行っている。北九州市もことし4月から市役所内に「すしの都課」を設け、同様に地域振興に努めてきた。5月に武内市長からX(旧ツイッター)上で呼びかけがあり、知事が応じる形で会談が実現した。

 会談で武内市長は「駅に降りた時からすしの王者の力を肌で感じた。率直に意見交換したい」と、北九州のすし折を贈った。新田知事は「取り組みが少し早かっただけで王者とは思っていない。せいぜい兄貴分ということでお願いします」と返し、富山湾ずしを振る舞った。

 武内市長はすし職人を養成する「東京すしアカデミー」の修了生であることを明かし、北九州市のすし事情を紹介。豊かな漁場に恵まれた海の利、卸売り市場から消費地が近い地の利、魚好きの市民性や腕の良い職人がそろう人の利を強調し、「手を携えて全国、世界にすしをアピールしたい」と語った。

 互いのすしの試食では新田知事が北九州のヤリイカ、げんちゃんアジ、アカウニを口にし、「しっかりとした食感がある」「トロリとしてスーッと解けていく」などと“食レポ”。シロエビ、イカの昆布締め、氷見マグロを食べた武内市長は「うま味が段違い」「脂が乗っているのに重くない」と語った。

 新田知事は「両自治体は距離が離れている。JR西日本も加えて、3者で連携したい」と話すと、武内市長は「両自治体を結ぶ線を『すしのゴールデンルート』とし、ほかの地域や企業も巻き込んで取り組みの輪を広げてはどうか」と提案。新田知事は「乗ります!」と即答した。

 さらに現在開催中の大阪・関西万博に触れ、両自治体の中間地点である大阪で、8月にすしに関する合同イベントを開くことで一致。武内市長は「万博の客も取り込みたい」と話せば、新田知事も「すしに凝縮された地方の力をアピールしたい」と応じた。

 会談では、民間レベルでは既に両自治体の回転ずし店同士が連携し、互いの地域のすしネタを店で提供する構想が進んでいることもにも触れ、すしをきっかけにさまざまな分野で連携、協調していくことを申し合わせた。