映画の情報やレビューサイトをチェックするのが好きだ。しかし、昨年あたりから映画ファンの一人として、とても不安になる記事が増えた。映画興行収入ランキングにおける「映画興行収入トップ10から洋画の実写消える」という類のものだ。

 「ザ・スタジオ」は、ハリウッドの映画製作スタジオ代表に就任した中年男性が、映画の存続と意義を守るために奮闘するコメディ作品。

 「コンチネンタル・スタジオ」の新代表に任命されたマットは、評価と収益のどちらも持ち合わせた映画を作る意欲に燃えている。しかし、スタジオの内輪もめや業界のルールなど、さまざまな課題が彼を待ち受けていた。

 マットは経営者として、組織改革のため予算を見直し、コスト削減や効率化を図ろうとする。しかし、映画を心から愛する彼は、キャストや監督、脚本選びに妥協できない。スタッフや権力者に翻弄されながら、さまざまな選択を迫られていく。

イラスト:kumiko yamaguchi

 第6話、マットは、デートを重ねた女性に誘われ、とある慈善パーティーに参加する。ある映画のロケ地となった会場に興奮し、天職である映画製作について話す彼を、居合わせた医者たちは「映画はアートではない。そして医療よりも大事なものなんてない」と一蹴する。マットは女性に映画の価値を認めさせたいあまり、ある行動に出る。

 流れるビリー・ホリデイの「It Had To Be You」には、こんな歌詞がある。「やっと見つけた人/あなたは私にスリルを与えてくれた/あなたは私に真実をみせ、悲しくもさせる/あなたに欠点があるとしても、私はまだあなたを愛している」。“あなた”とは、デート相手、それとも映画のことだろうか。

 昨年の映画興行収入トップ10を読むと、アニメ作品や漫画実写化作品が名を連ねている。優劣を付けるつもりはないが、普段から海外の作品を好んで観る私としては「あの作品が入っていないなんて…」と寂しい気持ちになる。思わず、マットのように叫びたくなってしまった。「洋画だって面白いんだよ!」と。

DJ CHIGON 富山市在住。ロックDJパーティ「LOVEBUZZ」のDJ。インディーロックを中心にプレイしている。