フランシスコ・ローマ教皇死去に伴い行われた新教皇選出選挙(コンクラーベ)で、米国出身のプレボスト枢機卿(教皇名レオ14世)が選ばれた。世界で13億人超ともされるカトリック教徒のトップに立つ新教皇選出の背景には何があったのか。前教皇の改革路線は継承されるのか。日本訪問の可能性は。教皇庁(バチカン)の情勢に詳しい上野景文・元駐バチカン大使に聞いた。(共同通信=太田清)
▽米大陸
―プレボスト枢機卿は候補としては無名に近くコンクラーベの下馬評にも入っていなかったとの報道がある。
「驚きと穏当な選出との思いの二面がある。米国人が選出されたことは驚きだ。バチカンでは、政治面の覇権国である米国出身者を教皇とし精神面でもヘゲモニー(覇権)を与えることに抵抗する雰囲気が長年強かったからだ。一方で、プレボスト枢機卿は、そのキャリアの多くをペルーで過ごし、南米の代表ともいえる。世界のカトリック教徒人口の5割以上が米大陸にいることを考えると、ある意味、選出は当然だとも思えた」
▽橋渡し役
―選出はバチカン内の保守派とリベラル派の妥協の産物だったとの指摘もある。
「バチカンでは近年、特に中絶や同性婚、LGBTQ(性的少数者)への対応など宗教倫理の問題で、教義の厳格な適用を重視する保守派と、新しい流れを受け入れようとするリベラル派の対立が先鋭化していた」
「フランシスコ前教皇はバチカンのいわば官僚職をほとんど経験したことはなく、南米の教会活動を中心とした現場のたたき上げ。教義にこそ手を付けなかったが、女性の幹部登用やLGBTQ信者の教会儀式参加を容認するなど、柔軟な面を持ち合わせ、保守派からの反発が強かった」
「プレボスト枢機卿は現場の仕事も官僚職もこなしてきた。倫理面でより穏健で、前教皇のように果断に行動するのでなく、各方面に目配りするバランスのとれた人物と目され、保守、リベラル両派が受け入れ可能で、両派間の橋渡し役になれると期待された」
▽司教省の経歴
―選出の背景は。