3月23日、岡山市で洋ランなどを栽培する花農家の木林秀樹さん(61)に一通のメールが届いた。

 「出動要請」

 岡山市消防団の分団長でもある木林さんは山あいの現場に急行した。目の当たりにしたのは煙や赤い炎が風にあおられて広がっていく景色。「怖かった。今夜は帰れんと覚悟した」。そこから、仮眠は毎日2~3時間という過酷な消火活動の日々が始まった。

 岡山市南区で発生した山林火災は、鎮圧まで1週間近く、鎮火まで19日間を要し、約565ヘクタールが焼ける大規模なものとなった。民家への延焼を食い止めるべく、炎や煙と懸命に対峙した消防団員の活動を振り返る。(共同通信岡山支局)

暴れるホース手に道なき山へ

 木林さんは市消防団の小串分団長を務める。23日も、団の仲間とホースを素早く延ばし放水をする訓練をしていた。終了後、ビニールハウスで洋ランに水をやっていたところ、出動を要請された。

 急いで向かった山あいの現場は、想像以上に火の回りが早かった。近くには資材置き場もある。2月に発生した岩手県大船渡市の山林火災が頭をよぎった。

 放水用ホースは送水時に暴れて持ちにくく、重い。両手で必死に持ちながら、木々が立ち並んで道のない山を登った。

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