今から10年以上前、あるキャンペーンが話題になった。

 「おしい!広島県」

 生産量が日本一なのにあまり知られていなかった、レモンなどの観光資源を「おしい」と紹介した、広島県の取り組みだ。2012年から2年ほど続いたこのキャンペーンは、県の担当者によると「大成功」。今ではJR広島駅にレモン商品があふれるようになった。

 このように、2010年代の初め頃、地元を控えめに、ユーモラスに紹介する「自虐的PR」が各地で打ち出され、反響を呼び好循環につながった例も相次いだ。

 しかし現在、インターネットの発達や生成人工知能(AI)の浸透で自虐的PRの効果に異変が起こっているという。どういうことなのか。(共同通信=米津柊哉)

「うどん県」「スナバはある」―相次いだ成功例

 瀬戸内海を挟んだ四国の香川県はうどんが有名だ。地域好印象度ランキングなどで順位が低いことに悩んだ県は、何とかブランド力を高めようと「最も知名度のある」うどんにすがった。

 2011年、「うどん県」に改名するというPRを開始。うどんしかないとも受け止められかねないが、「それだけじゃない」というメッセージを込めたという。

 「うどん県」は一躍話題になり、当時の記事によると、プロモーションビデオを公開したサイトにアクセスが殺到、公開翌日には約5時間にわたり接続困難な状態が続いた。

 2012年には、当時スターバックス空白県だった鳥取県の知事が、鳥取砂丘を念頭に「スタバはないけど、スナバはある」と豪語し、スタバをもじった「すなば珈琲」が誕生。後にはスタバも出店した。

 これらの例をみても分かるように、自虐的PRは大勢の人の目につき、効果が出たケースがあったといえる。

 それが、わずか10年ほどで時代は大きく変わった。

残り1733文字(全文:2469文字)