トヨタ自動車が、静岡県裾野市の自動車工場跡地で建設を進める実証都市「ウーブン・シティ」を報道陣に公開し、壮大なプロジェクトの一端が明らかになった。責任者で、豊田章男会長の長男の大輔氏は、トヨタが人やモノの移動全般を担う「モビリティーカンパニーに変革するためのドライバー(推進力)だ」と強調する。この街が描く車の未来とは―。(共同通信=東本由紀子)
▽実証都市
記者が2月下旬、公開されたウーブン・シティに足を踏み入れると、階段状になった印象的な建物が目に飛び込んできた。米グーグル社屋も手がけた建築家ビャルケ・インゲルス氏による住居で、今秋にも関係者らの入居が始まるという。建物の合間からは富士山が望めた。
街には自動運転専用の道が整備され、センサーやカメラを後付けできる信号機もある。公道では法律上の制約が多い実証実験も、民間の資本と土地を使えば「ハードルをぐっと下げることができる」(大輔氏)。
例えば、この街では信号機に取り付けたセンサーやカメラで人や車の流れを感知し、青信号と赤信号の周期を変えて混雑を緩和したり、安全でスムーズな自動運転に役立てたりと、車とインフラの連携を模索できる。
▽製造業から飛躍
ウーブン・シティは、トヨタ子会社のウーブン・バイ・トヨタ(東京)が中心となり計画を進める。「ウーブン」は英語で「織り込まれた」という意味がある。自動機織り(はたおり)機を発明した祖業の豊田自動織機が由来という。トヨタはこの自動車部から生まれた。
「糸が一人一人の従業員だとしたら、同じ色、同じ太さの糸が集まって一つの布を作るのがトヨタだ。車づくりは均一性を狙っていて、同じ商品を品質のばらつきがないようにつくることが大事。だがイノベーションは多様性から生まれる」と大輔氏は語る。ウーブンは多彩な糸、つまり多様な価値観を持った人たちが共通のビジョンのもとに集う会社を目指す。
英語で動きやすさなどの意味を持つ「モビリティー」という言葉も再定義する。語源となるムーブは「A地点からB地点への移動のほかに、感動するという意味もある。兼ね備えたものがモビリティーだ」と大輔氏。
では実際に何をするのか。