能登半島地震で被災し、近く閉店する富山県高岡市伏木中央町のヒミ時計店が22日、古い振り子時計を地元の伏木保育園に寄贈した。店のシンボルとして長年店内に置いていたが、店舗の取り壊しが決まり、行き場を失っていた。来店客や地域に親しまれた時計が、子どもたちと共に新たな時を刻み始める。

 ヒミ時計店は約80年前に時計の修理店として故氷見正則さんが創業。振り子時計は当時、店の看板代わりに設置した。ゼンマイ式で、高さが2メートルほどある。

 店舗は能登半島地震で床の一部が沈んだり、天井が崩れたりした。公費解体が決まり、店も畳むことになった。時計も処分する予定だったが、氷見さんの遠縁で高岡市国分の善光孝さん(62)が貴重だとして保存できないか考え、時の記念日に店を見学に訪れるなど交流があった伏木保育園に寄贈を打診。保育園側も「子どもたちに時間の持つ大切さを伝えたい」と快く受け入れた。

 寄贈式が同市伏木本町の同園であり、善光さんが園児74人に「大事にかわいがってください」と呼びかけた。園児は「大きな古時計」を歌い、善光さんに首飾りや色紙を贈った。時計は玄関に設置された。青木千紗ちゃん(5)は「音が鳴ってかわいい」と笑顔を見せた。

 店を切り盛りする氷見さんの長女、田近則子さん(76)は「父も喜んでいると思う。時計を守ってきたかいがあった」と語った。