富山県高岡市伏木古国府にある勝興寺の国宝指定記念誌が完成した。歴史や専門家による建造物の解説のほか、新たに撮り下ろした四季折々の写真をふんだんに盛り込み、壮大な大伽藍(がらん)の魅力を伝えている。29日から500部限定で希望者に頒布する。
勝興寺は1998~2021年の「平成の大修理」を経て、江戸後期を代表する大型寺院建築として22年に本堂と大広間・式台が国宝となった。唐門、宝蔵など10棟も国の重要文化財に指定されている。
記念誌は同寺と、同寺文化財保存・活用事業団、高岡市でつくる実行委員会が23年から2年がかりで作成した。写真をメインとし、建造物専門の写真家が上空や地上から撮影した約100枚を掲載。全景や各建造物の内観、外観などを紹介し、普段立ち入りが制限されている奥書院や、住職一家の仏壇が置かれた非公開の御内仏(おないぶつ)、加賀前田家11代当主の前田治脩(はるなが)、12代当主の斉広(なりなが)の位牌(いはい)を祭る御霊屋(ごりょうや)など貴重な写真もある。
学術調査を担った東京芸術大の光井渉教授や、担当調査官を務めた文化庁の田中禎彦文化財第二課長らが、建造物の特徴や国宝の指定理由を解説している。全160ページで、1冊3千円。同寺の受け付けで購入できる。
土山照慎住職(77)は「改めて寺を多くの方に見ていただけることになりありがたい」と語り、同事業団の氷見哲正理事長(75)は「能登半島地震で拝観者が減っている。いま一度寺に関心を持ってもらい、復興にもつながればいい」と期待した。