ビーバーは手先が器用なのだろうか。ルイス・キャロルのナンセンス文学の傑作『スナーク狩り』の作中で、ビーバーはひたすらレースを編む。仲間たちがスナークという架空の動物を探すことに血眼になっている姿をよそに、ビーバーは創作に夢中になる。作らずにはいられないのだ。さて実際のビーバーはどうか。

AKI INOMATA『彫刻のつくりかた』2018−2024(ongoing)
本作は一見して難解な抽象彫刻だ。流れるような曲線があれば、不規則な凹凸もある。削り跡は荒々しく生々しい。ささくれだった繊維が残り、層状の断面が岩壁のようにあらわになる。この有機的で抽象的なフォルムは、20世紀初頭の芸術運動を思わせる。しかし、実はこれ、ビーバーの仕事である。
自然や生き物との協働によって創作を展開するAKI INOMATAの代表作だ。制作過程はこうである。動物園のビーバーの飼育エリアに木材を設置する。それをビーバーがかじった。
この時点でも作者はビーバーか、INOMATAかと考え込む。しかし、それだけでは終わらない。さらにINOMATAはビーバーがかじった木を機械や人間の彫刻家に模刻させた。ビーバーの痕跡を、機械や人間それぞれの個性をにじませながらなぞったのだ(今回会場に展示されているのはビーバーと機械によるもの)。
INOMATAの発想を出発点にしたビーバーの直感的な行動が、機械や人間の手を介して新たな視点をつくる。本能と計算が重なり合って新しい問いが生まれる。作者とは誰か。アートとは何か。ビーバーの鋭い歯の痕跡を眺めて、ぼんやりと立ちすくむ。
会場には、そのビーバーがかじった木の中に巣くっていたカミキリムシの動きを追った映像作品も展示されている。え。彫刻の中でも彫刻が生まれているってことか! (田尻秀幸)
すべてのものとダンスを踊って
—共感のエコロジー
会場:金沢21世紀美術館
会期:開催中〜2025年3月16日(日)
開館時間:10:00〜18:00(金・土曜は20:00まで)
料金:一般 1,400円(1,100円)、大学生 1,000円(800円)、小中高生 500円(400円)、65歳以上の方 1,100円
※本展観覧券は同時開催中の「コレクション展」との共通です
※( )内はWEB販売料金と団体料金(20名以上)
休場日:月曜日(ただし2025年1月13日、2月24日は開場)、12月29日〜2025年1月1日、1月14日、2月25日
問い合わせ:金沢21世紀美術館 TEL.076-220-2800
—共感のエコロジー
会場:金沢21世紀美術館
会期:開催中〜2025年3月16日(日)
開館時間:10:00〜18:00(金・土曜は20:00まで)
料金:一般 1,400円(1,100円)、大学生 1,000円(800円)、小中高生 500円(400円)、65歳以上の方 1,100円
※本展観覧券は同時開催中の「コレクション展」との共通です
※( )内はWEB販売料金と団体料金(20名以上)
休場日:月曜日(ただし2025年1月13日、2月24日は開場)、12月29日〜2025年1月1日、1月14日、2月25日
問い合わせ:金沢21世紀美術館 TEL.076-220-2800