プロ野球のレジェンドに現役時代や、その後の活動を語ってもらう連続インタビュー「名球会よもやま話」。第45回は中村紀洋さん。豪快なスイングで通算404本塁打を放ったスラッガーです。大きな放物線を描く打球に興味を抱き続けていましたが、一つの移籍をきっかけに「ホームランは要らない」との心境に至ったそうです。(共同通信=栗林英一郎)
▽キャンプのメニューは打、打、打
甲子園は小学生の時に、よく観戦した球場。阪神のバックスクリーン3連発(1985年)ですか?バックネット裏で見てました。ものの見事でしたね。バース、掛布雅之さん、岡田彰布さん。やっぱりホームランは雰囲気を変える。ヒットじゃ変えられないです。そういう選手になりたいと思って、ずっとホームランに憧れました。
現実になったのは、大阪・渋谷高で甲子園行きを決めた決勝戦(90年夏)での2本。あれで空気がぐっと変わった。プロでもそうしたいなと思っていた。逆にね、打率を上げると考えたら、長く野球ができてなかったかもしれないです。結果が出ず、すぐ2軍に送られるみたいになって、5年ぐらいで終わってたかも。フルスイングで(キャリアを)築き上げて良かったなって思います。
プロ入りはイチローが一緒の年(92年)でした。彼には安打で絶対負けるんで、僕は豪快なスイング、遠くに飛ばすことで目立ちたかった。
水谷実雄さん(94、95年に近鉄打撃コーチ)の時はキャンプでバッティングばっかり。一言で言うと、しんどかったです。毎日ずっと朝から晩までバット振って、合間を見たら(外野を広く走らされる)アメリカンノックです。だから内野守備をする機会がなかったですね。
キャンプ前に新しいグラブが届くじゃないですか。使うのはキャッチボールだけなんですよ。ほぼバッティングしてたんで、オープン戦に入ってもカチカチ(グラブが硬いまま)。大体は打、守、走と項目が分かれてるんですけど、僕らの場合は打、打、打ですから。
4年目からレギュラーです。金村義明さんがFAで移籍したんです。その時から正三塁手で出たんですけど、18個エラーしました(遊撃手での1個を含む)。ほとんどは送球エラー。後逸したとか本当のエラーは2個だけなんです。16個は送球ミス。練習したことない。守備はするけど、シートノックぐらい。9割がバッティング、1割が守備です。それじゃうまくならない。これじゃまずいと思って(割合は)逆転しました。バッティングはもう十分やっただろうと思ってたんで。
▽阪神ファンはすごく集中してプレーを見ている
本塁打は狙わないと打てないと思ってます。