AIは人間を幸せにするのか。ここ数年、さまざまな観点から議論されてきたテーマだろう。科学技術の進歩には負の側面が伴ってきたことは言うまでもない。戦争や環境問題の歴史も科学技術を抜きにしては語れない。でも、悲観的になる必要はない。我々には四つ葉のクローバーがある。昔から言われてきたではないか。四つ葉のクローバーを見つけたら幸せになれると。

 テクノロジーを通じて表現し続けるアーティスト、スプツニ子!の提案がぶっ飛んでいる。AIを使って四つ葉のクローバーを発見してみてはどうかというのだ。AIと言い伝えの融合とでも言うのだろうか。いやはや、素敵にバカバカしい。

©Sputniko!

 新作の映像作品では、ドローンや手持ちのカメラでクローバーの群生地を撮影し、AIで解析してみせる。AIはあっという間に四つ葉を見分け、赤い枠で囲んで瞬時に指し示す。四つ葉、まさかの採り放題。

 しかし、この映像作品に満ちた空気は温かな幸せからは遠い。解析のスピードは暴力的なほど。悪の組織がテクノロジーを駆使して罪のない人々を空から攻撃するSF映画のようだ。なんだか後ろめたさを感じさせる見つけ方だ。

 本作が展示されている「D X P (デジタル・トランスフォーメーション・プラネット) —次のインターフェースへ」展のタイトルが示すように、地球という惑星は既にデジタルに覆い尽くされている。それが我々の感性や生活にどんな影響を与えるのかは分からない。この惑星に生きるスプツニ子!はAIにコントロールされようとする現代の幸せを軽快な足取りで問い直す。AIをただただ無駄遣いするユーモアが痛快だ。

 ちなみにスプツニ子!本人によると、本作のアイデアはクローバー畑でランチを食べている時に思いついたとか。幸せそうなシーンだ。 (田尻秀幸)

D X P(デジタル・トランスフォーメーション・プラネット)—次のインターフェースへ

会 期:開催中〜2024年3月17日(日)
会 場:金沢21世紀美術館
休館日:月曜日(ただし10月30日、1月8日、2月12日は開場)、10月31日、12月29日〜1月1日、1月4日、1月9日、2月13日
開館時間:10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)
入館料:一般1,200円(1,000円)
          大学生800円(600円)
            小中高生400円(300円)
            65歳以上1,000円
※( )内はWEB販売料金・団体料金(20名以上)
問い合わせ:Tel 076-220-2800