竹久夢二は多才だった。美人画で知られているが、本の装丁や雑貨のデザインもした。詩を愛し、短歌や俳句を詠んだ。童話も書いた。

竹久夢二「故園」
「大きな手」という対話形式の物語がある。そこでは、手が黒くて太いとバカにされている少女を描いている。彼女の手のたくましさには理由があった。家事を一生懸命手伝いながら、勉学に励んでいたのだ。その事実が明らかになり、少女の手が誰の手よりも美しいという結論に至る。無傷な白い肌にではなく、日焼けした力強さの中に美しさを見出そうとする。
夢二は「大きな手」を愛した。夢二が描く女性の手はいずれも大きい。本作で描かれる手もそうだ。いかにも夢二式美人のものだ。青海波模様の着物の袖をつかみながら、秋草に手を伸ばす。やはりその不思議なバランスの手に目が行く。うつむいて憂いを帯びた表情や小さな口元もまさしく夢二式だ。
夢二は女性を描き続けた。実在の女性をモデルにすることもあったが、理想の女性像を絵に凝縮した。夢二は心惹かれる女性の美しさについてこんな言葉を残している。「慎みがほんのちょっと忘れられた瞬間の美しさ」。本作も秋の自然に心を奪われ、夢中になっている瞬間だ。タイトルの「故園」は故郷という意味。理想の女性にふるさとの思い出を重ねたのだろうか。
本作が展示された企画展は、夢二と縁がある朝日町のふるさと美術館移転を記念した企画展の一つ。同時に開幕した「光と影のモビール 現象する歌」展(会期終了)も門出にふさわしく、軽やかさと華やかさがあった。間口が広く、子供から大人まで楽しんでいた。ただ展示作家の小松宏誠が得意にする屋外作品が控え目だったのは少しもったいなかった。いい広場もあるんだし。(田尻秀幸)
竹久夢二展 一夢二式美人を中心に一
会 期:開催中〜10月22日(日)
会 場:朝日町立ふるさと美術館
休館日:火曜日
開館時間:午前9時30分〜午後4時30分(入館は午後4時まで)
入館料:大人300円、小中高生200円
TEL.0765-82-0094
会 期:開催中〜10月22日(日)
会 場:朝日町立ふるさと美術館
休館日:火曜日
開館時間:午前9時30分〜午後4時30分(入館は午後4時まで)
入館料:大人300円、小中高生200円
TEL.0765-82-0094