高低差など難しい土地の条件を生かすため、スキップフロアを採用したS邸。

工夫された間取りで開放感が生まれ、どこに身を置いても家族のぬくもりが感じられる心安らぐ住まいに仕上がった。

玄関とキッチン・浴室などの水回り、リビングダイニング、フリースペースと子ども部屋、主寝室と書斎、小屋裏収納の5つのフロアからなる

富山市郊外の住宅地。その中で、ひと際目を引くライトグレーのスタイリッシュな外観。昨年の4月に完成したS邸では、ご夫婦と10代の男の子2人、4歳の女の子の5人が暮らす。

以前住んでいた家が古くなり、新たな住まいを考え始めたSさんご一家。ご主人の実家の庭じまいとタイミングが重なり、庭があったところに新居を構えることにした。 

ライトグレーの外壁に窓枠のブラックが映えるスタイリッシュな外観

広さは約34坪、さらに敷地の手前と奥で高低差もある。
難しい条件の土地にもかかわらず、フロアが段差で緩やかにつながるスキップフロアの間取りを採用したことで、狭さを感じない快適な居住空間が生まれた。

吹き抜けが開放的で明るい室内

室内は県産スギを中心とした木材や、「ウォーロ」という珪藻土と漆喰、天然沸石を組み合わせた塗り壁など自然素材を多用。

すがすがしい空気が流れ、吹き抜け南側の大きな窓から光が降り注ぐLDKは居心地が良く、いつも家族が自然と集う。

南側の大きな窓から入る日差しが強いと感じる時は、外付けの電動ブラインドで日差しを調節できる。右手の箱階段は小屋裏収納へつながる
主寝室の横に配された畳敷きの一室。初めは客間にする予定だったが、現在は在宅勤務中のご主人の書斎として活用する
14畳の小屋裏収納。各部屋に収納は設けず、玄関横のファミリークローゼットと小屋裏収納を大きく取ることですっきりとした間取りに仕上げた

畳での生活が長かったため、リビングは畳敷きに。
「ソファで横になってテレビや映画を観たい」というご主人の意見も考慮し、造作のデイベッドを備えた。

ダイニングは段差を生かした掘りごたつ風。
奥さまは「腰をおろすと、リビングで過ごす家族と目線が同じなのが良いですね」とほほ笑む。

畳敷きのリビングは、木材を多用した心がほっと安らぐ空間。1階部分は床暖房を完備

S邸は、施主と家づくりに関わる各専門工事業者が個別に契約を交わす「分離発注方式」を採用した。

自分たちの思いを担当業者に直接伝えやすいところに魅力を感じたという。例えば、建具や家具などは、職人と細かい部分まで打ち合わせて仕上げた手作りのものが多く、使い勝手も抜群だ。

「壁や木材の塗装に家族みんなで参加できたのも楽しかったです」とご主人。

唯一無二のオリジナリティーあふれる住まいは、暮らしを重ねるほどに愛着が増していくことだろう。

廊下は1m強の幅を持たせてゆったりと。間接照明が優しい雰囲気を醸す 
1階は生活動線を考慮し、回遊できる間取りに。ダイニングとキッチン、家事室と一直線でつながる家事動線は奥さまのお気に入り
サンルームは洗濯の量に合わせて物干し竿を増やしたり減らしたりできるように工夫した

 

【取材協力】
荒井好一郎 建築設計室
富山市水橋辻ヶ堂262-1
090-2628-6835