「また1年が過ぎてしまった」。北朝鮮による拉致被害者横田めぐみさん=失踪当時(13)=の弟で、家族会代表の拓也さん(57)は昨年12月、報道陣の取材に悔しさをにじませた。拉致問題は歴代政権が「最重要課題」に掲げながら、2002年に5人が帰国して以降、停滞が続く。高市早苗首相が「何としても突破口を開く」と決意を示し、拓也さんも「明るい兆しが見えてくるのではないか」と期待して間もない時期の解散総選挙。今月4日に、90歳の誕生日を迎えためぐみさんの母、早紀江さんは今、何を思うのか。(共同通信=安祐輔)

 ▽高齢化

 昨年10月に就任した高市氏は、金正恩朝鮮労働党総書記との日朝首脳会談を北朝鮮に打診したと表明した。同月には来日したトランプ米大統領が家族と面会し、「できることをやる」と語った。こうした動きが事態打開につながるか家族が注視する中、解散総選挙となった。

 拉致被害者やその家族の高齢化は進む。めぐみさんは61歳、帰国した被害者の曽我ひとみさん(66)と共に拉致された母ミヨシさんは94歳となった。2020年にはめぐみさんの父滋さんが87歳で、昨年は有本恵子さん=失踪当時(23)=の父明弘さんが96歳で亡くなり、家族会の親世代は早紀江さん(90)だけになった。

 ▽「おかえり」と言える日が…

 早紀江さんは今月4日、90歳の誕生日を迎えた。娘と引き裂かれて48年あまり。「元気だと信じ、毎日を歩んでいる」と言うが、体力の衰えを感じることが増えた。めぐみさんの弟の拓也さんは「長い間苦しみ続けてきた母に、『おかえり』と言える日が来てほしい」と話している。

 「できることをしてきたが、これ以上何をすればいいのか」。1月27日、卒寿を前に取材に応じた早紀江さんは、感情を押し殺すように語った。

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