ベンチの配置が生み出す居心地を心理・行動面からも解明
フクビ化学工業株式会社のまちづくり事業推進室(以下、フクビ化学工業株式会社)は、早稲田大学 人間科学部の佐野友紀研究室(以下、早稲田大学)と2023年度から居心地の良いベンチを明らかにするための共同研究を継続しております。2024年度は、より実際の歩行者空間に近い場所で新たな調査手法を追加して利用者の心理・行動の変化を明らかにし、研究結果は2025年9月9日~12日に開催された日本建築学会大会にて発表いたしました。今年度(2025年度)についても、新たな視点を加えて引き続き共同研究を実施しています。
近年、”人々の集える場所”として認識が高まりつつあるベンチは、屋外空間をサードプレイスとして活用する際に多く設置されるようになりました。一般的にベンチは設置される通路に対して「平行」に配置されますが、2023年度の研究では建物の列柱間に設置されたベンチの配置「平行」に加えて、通路に対して直角に置いた「垂直」、2つのベンチを内向きにした「ハの字」、同じ方向へ斜めに向いた「斜め」の4通りに設定しました。結果、「斜め」の時は、行動に合わせて座席を選択していることが明らかとなり、ベンチの配置によって利用状況が変わる可能性が示唆されました。
2024年度はアンケートによる心理的調査も加え、利用者の感覚などを含めた多角的な調査を行いました。また、調査地を柱と天井のある空間からペデストリアンデッキに変更したことで、より実際の歩行者空間に近い環境で実験し、利用状況の分析だけでなく、どのような場所にどのレイアウトが適切であるか検討しました。

【2024年度に実施した共同研究の概要・結果】
田町駅前のペデストリアンデッキにて、2024年5月13日~22日(平日5日間)に行動観察、2024年7月26日に被験者を集めアンケート調査を行いました。

行動観察実施風景(平行)

(垂直)

(斜め)

(ハの字)

図1:配置ごとの滞在時間
行動観察では、5日間のベンチ利用者はのべ1,383人でした。平行配置と回転配置(ベンチを壁に対して角度を付けて置く垂直、斜め、ハの字配置の総称)を比較した結果、平行は8.24分、垂直12.33分、斜め11.16分、ハの字11.5分だったことから、回転配置は平行配置に比べ滞在時間が長いと判明しました。下図は実施レイアウトになります。

図2:実施レイアウト
また、配置ごとの利用者行動を比較した結果、平行配置は荷物置き、身だしなみ、垂直置きはPC作業、斜め置きは筆記、ハの字置きは睡眠や読書が多く行われていました。歩行者の進行方向については、どの時間帯も左側通行が行われており、ベンチは左側(駅側)に置かれているほど利用者数が多かったため、利用者は進行方向から近い席に座る傾向があると分かりました。

図3:アンケート調査に使用した評価語

図4:配置ごとの「座りやすさ」評価
アンケート調査は、被験者23名を対象に「座りやすさ」に関する項目について5段階評価を行ってもらいました。結果、座りやすさ評価の平均は、平行4.25、垂直3.69、斜め3.42、ハの字3.27でした。次に「座りやすさ」に影響する項目を分析した結果、「長時間滞在できること」「魅力的であること」「馴染みがある」ことでした。また、回転配置における壁側と歩道側席について比較した結果、壁側は歩道側に比べ、滞在時間が長く、魅力的で、人の視線が気にならないことが明らかとなりました。
以上より、平行配置は、「座りやすさ」「馴染みやすさ」の評価が高く、気軽にできる行動が多かったことから短時間利用する場所に適している一方、回転配置は座る位置によって心理評価が大きく異なり、実際に行われていた行動、滞在時間からは長時間利用する場所に適していることが分かりました。
【2025年度以降の検討内容について】
今年度については、2024年度の研究で回転配置における歩道側の座席の改善が必要であると明らかになったため、他の人の視線を防ぐ植栽を置いた時の変化について研究しています。
フクビ化学工業株式会社は早稲田大学との共同研究を継続して行うことでベンチ設置の効果を定量的学術的に解明し、より良い公共空間を生み出す提案力を強化し、人と環境に優しいまちづくりに貢献していきます。
参考文献
・中村友紀, 宮嶋伯周, 佐野友紀.歩行者専用道路における壁に接したベンチの平行・回転配置が利用者行動・心理に与える影響 その1:ベンチ利用者の行動観察調査, 日本建築学会大会学術講演梗概集(九州). 2025. p.501-502
・宮嶋伯周, 中村友紀, 佐野友紀.歩行者専用道路における壁に接したベンチの平行・回転配置が利用者行動・心理に与える影響 その2:現地におけるベンチ利用心理評価実験, 日本建築学会大会学術講演梗概集(九州). 2025. p.503-504
■ファンダラインとは
「ファンダライン」は、自然と人々を迎えいれてくれる普遍的でやさしいデザインを心掛け、大きな広場から建物の軒先まで、さまざまな「まちの1階」に人が自由にいられる場所を提供することを目標にした新しい屋外家具ブランドシリーズです。




「ファンダライン」を通じて、魅力あふれる街並みや公共空間に人々の休息の場を提供し、日常のまちを活性化させることを目指します。
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