「これに乗れるのだったら、(同じ区間を結ぶ)あいの風とやま鉄道より高い運賃でももうけものですよ」。西武鉄道の往年の花形特急用車両「レッドアロー」が日本で唯一活躍する富山地方鉄道で心が躍り、ご一緒していた富山県の有力紙、北日本新聞社の西嶋伸一論説副委員長さんにそう訴えかけた。絶賛には“自己矛盾”が潜んでいることに気づかずに…。

 2025年10月23日に富山県魚津市で開催された北日本新聞社の会員制「にいかわ政経懇話会」に呼んでいただき、鉄道事業の不振に揺れる富山地方鉄道の経営再建問題についてお話しした。村椿晃・魚津市長と水野達夫・滑川市長、富山県議の方々、地元政財界関係者などの幅広い皆さまにご出席いただき、私の拙いお話を熱心に聴いていただいた。お世話になった皆さまに改めて厚く御礼申し上げます。

 終了後の午後2時20分ごろに富山市へ向かう際、魚津から富山まで第三セクター鉄道「あいの風とやま鉄道」に乗るか、同じ区間の新魚津から電鉄富山まで富山地鉄本線を利用するかの選択を迫られた。

 富山地鉄は午後2時28分発なので待ち時間は少ないが、単線で途中に22駅もあるため、電鉄富山まで56分かかる。これに対し、あい鉄は2時40分発だが、複線で途中は5駅だけのため半分の28分で着く。しかも運賃は大人600円と、地鉄より300円も安い。

 効率的な移動ならば、あい鉄の「一択」だろう。しかし、私は優れた鉄道旅行を表彰する「鉄旅(てつたび)オブザイヤー」の審査員も務める鉄道旅行好きだけに、急用がなければ長旅を好む。

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