体操女子で2012年ロンドン、2016年リオデジャネイロ両五輪に出場した寺本明日香さん(29)がフィギュアスケートに挑戦し、今年2月に開かれた愛知県選手権で実戦デビューを果たした。体操選手を引退してから3年。フィギュアスケートのどんな部分に魅了されたのか―。「『2回転なんて余裕じゃない?』と言われるが、陸と氷の上では全然違う」と話す寺本さんに、新たなチャレンジの舞台裏を尋ねた。(共同通信=井上将志)
▽体操よりスケート動画が伸びる「謎現象」
―フィギュア挑戦の発表についての反響をどう受け止めていましたか。
「体操の現役を引退してからスケートやリンクに遊びに行った動画を、ちょくちょくインスタグラムとかX(旧ツイッター)に載せていたのですが、なぜか体操よりも、スケートをやっている動画の方が(再生数が)伸びるという謎現象が毎回起きていました。私の体操よりも、スケートの方が見たいのかな?と何となくは感じていました。『スケートの試合に出る』とつぶやいた時の反響もすごく大きくて、単純にびっくりしているというのが一番です」
―かなり激励のコメントが寄せられたのでは。
「今まではずっと、体操選手として、競技として、点数を取りにいくために毎日努力して、というところにいました。でも、楽しむ、趣味の延長線上でやるということに『それが本来のスポーツのあり方だよね』という声をいただいた。今29歳で、まだ若い方だと思うので『体が動くうちにやりたいことをやってほしい』という声もありました」
「あとは『スケートっていう競技が大人になってからでも楽しめるスポーツだということを、いろんな人に知っていただけるだけでもうれしい』というお声もいただきました。体操もスケートも、どんなあり方であっても、どんなレベルでもあってもスポーツとしてある、ということをみんなに知ってもらえたら、という思いもあります」
▽「大人でも気軽に参加できるレッスン、リンクに通いやすい雰囲気はもうちょっと必要」
―体操やフィギュアスケートは競技スポーツとしてのイメージが強い。フィギュアの生涯スポーツとしての可能性をどう感じていますか。
「競技のイメージが強いというのは、テレビで全日本選手権などを見て、体操ってこうとか、スケートってこうという風に、イメージを持たれると思う。私は体操なら前回りから始める、ということを基本的に知っていますけど、スケートって何から始めるのかを知らなかった。いきなり全日本選手権のようなことをやるのかと思っていたので。スケートも、まずは前に進む、足踏みするとか、そういったところから実際は始める」
「まず、そういったことを知る機会が必要なのと、大人の方でも気軽に参加できるレッスン。あとは、リンクに通いやすい雰囲気というのは、もうちょっと必要。私はパッとリンクに行っちゃったので、特に恥ずかしさもなく、ひたすら自分で滑っているみたいなことができました」
―価値観が多様化した現代では、手軽さがないとハードルが高いという部分があるのでしょうか。
「そうですね。とはいえ、スケートの方が体操よりはやりやすいと思います。体操は大人のクラブ、レッスンがあまりなくて、どちらかというとバック転の教室とかになる。あまり大人が入れる環境がない。ガチな体操でなくてもいいので、健康運動とか、ちょっと前回りや後ろ回りをするレッスンがあればいいなと。それはスケートをやって感じました」
▽かつて鳥取や大学で習ったスケート、再び始めるきっかけは「大庭雅ちゃん」
―スケートに興味を持ったきっかけは、いつごろだったのでしょうか。