日本の美術の今を紹介する「第11回日展富山展」の一般公開が25日、県民会館で始まった。開幕を待ちわびた県内外の美術ファンらが来場し、伝統の技と清新な感性が息づく秀作の数々を堪能した。5月11日まで。(田中智大)

 日展には日本画、洋画、彫刻、工芸美術、書の5部門がある。富山展では、昨年秋に東京都内で開かれた本展からえりすぐった作品と、県内作家の力作を合わせた約270点を展示している。

 午前10時の開場から家族連れらが続々と訪れ、じっくりと作品を鑑賞。戦争や自然災害など時代を反映した絵画や、若い感性あふれる抽象作品にも関心が集まった。展示作は一部を除いて写真撮影でき、カメラを向け楽しむ姿も見られた。

 初めて日展富山展を訪れた富山市上飯野の棚田優子さん(63)は、海に浮かぶ小島を墨絵調で描いた日本画を見つめ「シンプルな世界観の中に力強さを感じる」と話した。日展ファンという福井県の鈴木謹一さん(74)は、妻と会場をくまなく見て回り「図録では伝わり切らない作品の迫力を感じる。心を癒やす時間にもなった」と語った。

 会場には多くの若い世代の姿もあった。富山大原簿記公務員医療専門学校の学生約40人は、授業の一環で来場。思い思いに作品を鑑賞し、魅力を語り合っていた。デザイン学科2年の奥村響生(ひびき)さん(19)は、気に入った作品に工芸美術部門の中井貞次顧問(京都)の「ペルシア回想」を挙げ、「抽象表現の中に、温かみを感じた」と言う。普段は洋画の創作に励んでおり、「他のジャンルの作品を見ることで、良い刺激にもなった」と笑顔を見せた。

 日展富山展の開場時間は午前10時~午後5時(入場は午後4時半まで)。公益社団法人日展、日展富山会、県民会館、北日本新聞社主催。