インテックは、県立中央病院(富山市西長江)に対し、デジタル技術や人工知能(AI)を活用して病理診断を行う「デジタルパソロジー」のシステム導入を支援した。医師の働き方改革が急務となる中、診断の省力化につながるほか、顕微鏡を使わないため経験の浅い病理医でも精度の高い診断が可能になる。

 インテックは2007年から、病理・細胞診検査のデータ管理などを担う業務支援システム「EXpath(エクスパス)」を県立中央病院に提供している。このシステムと他社の高性能なスキャナーや画像管理システムを連携させることで、病理検査のデジタル化を実現した。

 同病院では近年、検査の多様化で検体が増え、病理医や技師の作業負担が大きくなっていた。システムの導入で、顕微鏡の操作に慣れていなくても診断をしやすくなった。AIによる診断支援ツールも備えており、見落としを防ぐ効果も期待できるという。

 3月から稼働しており、病理診断科の石澤伸部長は「病理医勤務の多様化や、AI技術活用の基盤になると期待している」とした。

 インテックがデジタルパソロジーの導入を支援したのは東大医学部付属病院に続いて2件目。同社は「全国の医療機関の中でも先駆的な事例」と説明する。

 国内の病理専門医は4月時点で2789人と、不足が深刻化している。病理医のいる機関に別の病院から検体を届けて診断を依頼するケースも多く、標本の管理方法などが課題になっている。データ化することで標本の劣化や変色の影響を受けず、遠隔地の医師ともオンラインで診断内容の共有をしやすくなることが期待されている。

◆デジタルパソロジー◆ 細胞などの病理ガラス標本(プレパラート)を専用スキャナーで撮影してデジタル化し、モニターに表示して病理診断をする方法。マウス操作だけで、従来の顕微鏡のように倍率を変えてモニター画面で観察できる。