医療・健康関連システム開発のキュアコード(富山市総曲輪、土田史高社長)は、運動量や心拍数を測れる「ウエアラブル端末」を用いたアプリの開発を加速させている。富山大などと共同で研究を進めており、特許を取得。身に着けた端末からリアルタイムの細かいデータを取得でき、健康維持や医師による適切な指導などに活用が期待できることから「早期の実用化につなげたい」としている。
キュアコードは、大学や医療機関向けの臨床研究用アプリや、富山市の「とほ活」など自治体が展開する健康促進関連サービスの開発、運営を手がける。医療費の増大が課題となる中、病気の進行や入院の抑制が期待できるサービスとして関心が高まっている。
富山大と共同開発したアプリは「スターチス」と「1型糖尿病患者向けインスリン投与量判定システム」。いずれも24年10月に特許を取得した。
スターチスは、記憶に関するテストと運動を掛け合わせることで記憶力の維持や向上を図るアプリ。ユーザーは表示された複数の画像を記憶し、数十時間後に思い出せるかテストする。記憶の定着につながる有酸素運動を指示する機能もあり、ウエアラブル端末で適切な運動となっているか確認できるようにした。記憶力定着に運動の効果が見込めることを確認しており、実用化に向けて同大が研究を続けている。
もう一つは、血糖値を下げるインスリンを体内で作れない患者向けのアプリで、人工知能(AI)で画像解析する機能で食事の写真から炭水化物量を算出し、食前の血糖値の数値を踏まえて投与量の参考値を表示する。22年から富山大付属病院などで臨床試験を行い、効果を検証している。
血糖値には運動量も関係することから、ウエアラブル端末と連動した機能の拡充も検討している。土田社長は「端末で秒刻みの正確な数値を記録できる。ビッグデータの活用の幅も広がる」と利点を強調する。
心不全患者向けのアプリ「ハートサイン」も三重大と共同開発した。患者が血圧や体重、症状を記録し、医師と共有することで、症状の見逃しによる再発や緊急入院のリスク軽減を図る。米グーグルのウエアラブル端末「フィットビット」と連携し、運動量のデータも記録できる機能を追加。臨床試験の結果を踏まえ、27年度の実用化を目指す。
高齢化で心不全患者は増えており、キュアコードは年間500人が入院する規模の自治体でサービスを導入した場合、およそ7500万円の医療費削減効果があると試算。自治体への提案を進めている。
同社は2月、富山大五福キャンパスにある富山市新産業支援センターから、同市総曲輪のビルにオフィスを移転。事業拡大に向けて業務スペースを広げ、従業員も増やしている。