富山県は、たんの吸引や人工呼吸器など日常的に介助が必要な医療的ケア児(医ケア児)を受け入れる県リハビリテーション病院・こども支援センター(富山市下飯野)の「こども棟」について、2026年4月から病床数を半減させるとしていた方針を撤回し、現行の52床を維持すると決めた。新田八朗知事が5日の定例記者会見で発表した。
こども棟を巡っては経営改善の一環で、稼働率の低い病床が24床に減らされることが今年夏に明らかになった。これを受け10月23日に医ケア児の家族や小児科医、県議らが新田知事を訪ね、削減を見直すよう要望していた。
要望では、家族が急病や所用の際に一時的に子どもを預けるレスパイト(短期入所)の受け皿として、こども棟が重要な役割を果たすと強調。4~9月の病床稼働率は50%を割り込んだものの、医療機器を装着した子どもを送迎する負担が大きかったり、家族間で限られた受け入れ枠を譲り合ったりし、利用を諦めている現状があると訴えた。
新田知事は会見で「(病床削減の方針は)利用状況のデータに基づいたものだが、潜在的なニーズまでは把握できていなかった。それは認めなければならない」と述べた。医ケア児の家族に短期入所のニーズを調査した上で、県全体の支援体制を検討する協議会を新設するとした。具体的な時期などは未定。
県によると、同センターは公設民営で、病床を削減する前提で26年度からの指定管理者の選考を進めていたことから、公募プロセスをやり直すことにした。募集期間は未定。
会見後に報道陣の取材に応じた有賀玲子厚生部長は、こども棟について、現場の看護師が足りず、現行52床を保ってもフル稼働は難しいと説明。持続可能な病院経営のためには、地域の訪問看護や通所施設などに受け皿を分散していく必要があるとした。
医ケア児の家族らと共に県へ病床数削減の見直しを求めた種部恭子県議は「訴えが届いて良かった。本当に必要な病床数が実装されるか見届けたい」と話した。