富山県南砺市岩屋(井波)の表具店「岩崎精正堂」は今月から、日本式の表装技術を身に付けようと来日した台湾の台南芸術大の大学院生を受け入れている。同店の3代目、岩崎太成さん(28)が同大で教えたことが縁で実現した。岩崎さんは「学んだことを生かしてもらえるよう力を尽くしたい」と意気込んでいる。
岩崎さんは2016年から4年間、古美術の保存・修復の第一人者として米国で活躍する西尾喜行さんに師事した。帰国後は父の正克さんらと岩崎精正堂を営み、県内にある寺宝の修繕などを担っている。
台南芸術大での指導は西尾さんの工房からの依頼で、過去に2回実施した。掛け軸の修復・保存方法やびょうぶの表装などを伝えた。その際の指導ぶりが評価され、今回の依頼を受けた。
滞在しているのは同大大学院3年の張霆宇(ちょうていう)さん(33)。文化財の保存・修復に関わるため、東洋絵画と紙の修復について学んでいる。日本式の表装の繊細さや軸装のバリエーションの豊富さに関心があり、実地で教わりたいと来日した。
期間は3~6月の4カ月間。平日の朝から夕方まで、岩崎さんと父の正克さんが張さんにマンツーマンで教えている。掛け軸やびょうぶの裏打ちや絵の具のにじみや割れを防止する技法など、日本式の技術の基礎を伝えている。
張さんは「使う道具や材料など、違いを感じることばかりで楽しい。毎日があっという間」と充実感をにじませる。井波地域のシェアハウスに宿泊し、食事は自炊している。
岩崎さんは「指導することで自分でも知識を学び直すきっかけになり、刺激になっている」と話す。「ここで学んだ技術や日本文化の良さを台湾で広めてもらえたらうれしい」と期待した。