第59回北日本文学賞の贈呈式が25日、富山市のANAクラウンプラザホテル富山であり、応募作880編の中から「月と鱧(はも)」で入賞した大阪市のフリーター、岡本佳奈さん(35)に、蒲地北日本新聞社長から賞状と記念牌(はい)、副賞100万円が贈られた。
富山ゆかりの作家で選者の宮本輝さんと、地元選考委員らが出席した。委員を代表し、山形大教授の加藤健司さんが選考経過を説明。宮本さんは「皆さんは狭き門を通ったことを知ってほしい。優れた作家になれるかもしれない。その心意気でこれからも頑張ってほしい」と述べた。
入賞作は派遣社員として働く40代女性を主人公とした一人称小説。何げない暮らしの様子を描きつつ、日々の不安や孤独感、ささやかな幸せといった心の機微をテンポ良くつづった。岡本さんは「元日に発表される賞なので、幸せなものを書こうと思っていた。3度目の挑戦でやっと富山に来ることができてうれしい」と語った。
「子供を売る男」で選奨を受賞した兵庫県西宮市の主婦、つくし(本名・向井晴美)さん(77)と、「ちび丸の背中」で同じく選奨を受けた千葉県浦安市の会社員、すずきあさこ(本名・鈴木麻子)さん(46)にも賞状と記念牌、副賞30万円が手渡された。