空調設備の世界トップシェアを誇る化学メーカー「ダイキン工業」の企業城下町として知られる大阪府摂津市。この地で生まれ育った濱口光緒さん(80)は2024年8月に受け取ったある血液検査の結果にがくぜんとした。検査は、京都大などの研究チームが摂津市や近隣自治体の住民ら約1190人を対象に、一部物質で発がん性などの健康影響が懸念されている「有機フッ素化合物(PFAS)」の濃度を調べたものだった。濱口さんの血中濃度は、米国の学術機関が「リスクがある」とする指針値の4倍を超えていた。「何も心当たりがないのに、どうしてこんなに高い数値が出るんだ…」
高い血中濃度の背景にあると疑われるのは、PFASの代表物質「PFOA」。ダイキンが長年製造しており、摂津市の地下水や土壌からはPFOAが高濃度で確認された。
PFASを巡っては、岡山県吉備中央町や沖縄県の米軍基地周辺など、各地で汚染が明らかになり、摂津市の住民とダイキンの動向に注目が集まっている。(共同通信=斎藤修真)
▽汚染源は地域が誇る世界的企業
PFASは、人体に取り込まれると長期間にわたって血液や臓器に残ることから「永遠の化学物質」と呼ばれている。米学術機関「科学・工学・医学アカデミー」は、健康リスクが高まる可能性があるPFASの血中濃度を、1ミリリットル当たり計20ナノグラム(ナノは10億分の1)と設定。摂津市では検査をした住民の3割が、この指針値を超過していた。
濱口さんは摂津市でPFASが検出されたことを知った当時をこう振り返る。「PFASなんて言葉は聞いたこともなかった。自分の住んでいる地域から全国で一番高い数値が出たと言われても、正直、何のことかよく分からなかった」
摂津市の地下水からは全国で最も高濃度となる1リットル当たり計1855・6ナノグラムのPFASを検出。環境省が設定した水道水の暫定目標値の約37倍に当たる数値だった。
汚染源の一つが、地域を代表する企業・ダイキン。社史などによると、創業は1924年で、1930年代には冷凍機製造やフロン事業といった化学事業に着手した。現在では空調分野の売上高で世界首位を誇る。摂津市は淀川製作所が設立されて以来、長らくダイキンの「企業城下町」として発展してきた。
ダイキンは1980年代からPFOAの製造を開始したが、2000年ごろから環境中への長期残留性を認識。2012年には淀川製作所での製造・使用を終了する。
そこから10年近い時が経過、摂津市で高濃度の汚染が確認される。