◎今週の一推しイベント

 【23日(土)】

 ▽「つくるよろこび 生きるためのDIY」(~10月8日、台東区・東京都美術館)

 日曜大工や家の修繕、住民によるまちづくりなどで注目を浴びる「DIY(自分でやってみる)」に“新たな視点”を加えた展覧会が、上野で開催されている。

 「ものづくりというだけでなく、“自分の生き方や居場所をつくる”DIYの内的な価値に光を当てたかった」と担当学芸員の藤岡勇人さん。現代作家5組と建築家2組が自身の人生と社会を巡る課題解決の手段と捉え、創作した作品約250点を紹介する。

 ラルフ・ローレンなどの古着シャツに刺しゅうをして、アートとして展示したのは久村卓さん。ヘルニア発症をきっかけに、従来の彫刻制作よりも体に負担をかけない制作方法を模索する中でたどり着いた芸術表現という。

 若木くるみさんは、文房具や台所用品、空き缶、家具など自宅にある日用品を使った実験的な版画作品を展示。1人用の食卓を横長のロール紙に連続して刷った「さいごの版さん」は壁一面の大作だ。「最後の晩餐」に似せた食卓に、いずれも版画で構成された12人とその食事が色彩豊か。自身の身体を版にしたダイナミックな“人拓”も披露するなど、身近なモノから新たなイメージを呼び起こす。

 災害や経済的理由で生活を奪われた人々をテーマとした作品も。野口健吾さんは、路上生活者たちが創意工夫してブルーシートや廃材を組み合わせた「庵(住居)」を撮影し展示。台風などですぐ崩れ去ってしまう庵を通して“生活を築く”ことの意味を問う。東日本大震災の被災者の営みを記録してきた瀬尾夏美さんのドローイングも多数展示されている。

 「つらい出来事に遭っても新たな生活をつくる力を誰もが秘めている。アートやDIYに宿る“内発性と共生”の精神に触れてほしい」と藤岡さん。困難を乗り越えて生きることへの広い思考を得られる展覧会だ。

 ○そのほかのお薦めイベント

 【23日(土)】

 ▽「ピクチャレスク陶芸 アートを楽しむやきもの―『民藝』から現代まで」(~9月15日、港区・パナソニック汐留美術館) 

 豊かな色調と質感で創作された陶芸作品約120点を紹介する展覧会が、汐留で行われている。アートとしての陶芸の魅力をわかりやすく伝える企画。学芸員の川北裕子さんは「親しみやすい雰囲気と色の躍動感あふれる作品も多く、焼き物に詳しくない人でもその美しさや個性を楽しめる」と話す。

 19世紀後半~1980年代生まれの国内外の作家約50人による作品を紹介。近代の個人陶芸の礎を築いた北大路魯山人の「織部俎板盤」は、高温で焼くことによって光沢のある青緑の織部釉を実現した。民藝運動の中心人物だった河井寛次郎の晩年の代表作「三色打薬貼文扁壺」は赤、緑、茶に着色され絵画的な彩りが感じられる。

 陶磁器メーカー「ロイヤルコペンハーゲン」に所属したデンマークの巨匠、アクセル・サルトのとげのある造形の花器は、力強さとエレガントさを表現。日本で人気の高い英国の陶芸家ルーシー・リーの「溶岩釉スパイラル文花瓶」も。ピンクやブルーの色土を使った独特のスパイラル模様を間近で堪能できる。

 国際的評価の高い現代作家桑田卓郎さんによる15ピースの器状の「色彩サラウンド」はカラフルな色使いに心が躍る。川北さんは「陶芸は生活の延長線にあるアート。日々使う食器の中にも芸術性を発見する機会にしてほしい」と話した。

 ▽「Garden」(~9月1日、中央区・銀座三越、入場無料)

 国内外で活躍する現代アーティストSHUN SUDOさんの個展が、銀座で開催されている。

 人々を笑顔にする花と、衣服の布をつなぐボタンを合わせた「ボタンフラワー」が象徴的モチーフとして知られる。異なる国や文化を背景にする人間の心がひとつになることを願い創作された。

 今回は、幼いころ祖母に連れられて歩いた銀座の街に“たくさんの花を咲かせたい”と、鮮やかな油彩の作品群を制作。「幸福を感じていた」という思い出を、ボタンフラワーのポップな印象とは異なる柔らかなニュアンスで描いた。物語性と生命の躍動感にあふれた世界を感じに、小さなガーデンに足を運びたい。

 【25日(月)】

 ▽「兵庫県川西特産のイチジクを使ったタルト」(~9月7日、中央区ほか)

 フルーツタルト専門店「キル フェ ボン」の都内3店舗(グランメゾン銀座、青山、東京ドームシティ)で、兵庫県川西市産イチジクを使った期間限定メニューが販売される。

 完熟状態で朝に収穫したイチジク「朝採りの恵み」をその日のうちに東京へ空輸、柔らかな果肉をチョコレートクリームと合わせてタルトに仕上げる。地域特産フルーツのブランド化を後押しする試みという。

 【28日(木)】

 ▽「ルールって何?」(14~16時、渋谷区、参加費無料)

 小学生から25歳までの学生が利用できる公共施設「代官山ティーンズ・クリエイティブ」が、多様な価値観に触れ自己表現力を養うワークショップを開催する。

 講師は自ら創刊した日本中学生新聞の記者として活躍する中学3年の川中だいじさん。登下校中にスマホを使えない校則に疑問を感じ、生徒会長として先生に訴えている。「既存のルールが正しいとは限らないのに、守ることを目的とする大人が多い。子どもでも『おかしい』と感じたら伝え、世の中を変える権利と自由がある」と話す。「僕も議論は得意ではないが、クイズ形式にして皆で学び、話し合うきっかけをつくりたい」