土蔵造りの町並みで知られる富山県高岡市の山町筋を拠点に、全国の小中高校生から詩を募る「高岡・山町ポエム大賞」。毎年、感性豊かな作品が寄せられており、今年で22回目を迎える。応募締め切りを前に、選者を務める詩人で直木賞作家のねじめ正一さんを講師に7月に開かれたポエム教室の様子を紹介する。
ポエム教室は7月、高岡市の高陵小学校と高陵中学校でそれぞれ開き、小学4年生80人と中学3年生93人が学んだ。両校区は、山町ポエム大賞の拠点であり、国重要有形・無形民俗文化財の「高岡御車山(みくるまやま)祭」を担う山町筋がある。今年は初めて一般の人を対象にしたポエム教室も高岡御車山会館で開いた。
各教室でねじめさんは、童謡「サッちゃん」で知られる詩人、阪田寛夫さん(1925~2005年)が作詞した「ねこふんじゃった」を取り上げた。体調を崩して入院したときに詩集を手にし、なじみのある童謡にあらためて出合った。「古くて新しい。物語性がありながら言葉として面白い」と良さを強調。何度も出てくるフレーズを参加者と共有し、「詩は繰り返しが大事。繰り返しは気持ちいいし、力がある」と詩作のこつを伝えた。
教室の開催に合わせて自身が書き下ろした詩「パンダ ここなんだ」も紹介した。好きというパンダから発想し、語尾の「んだ」と韻を踏んだ作品。この詩にならい、両校の児童生徒は「パンダ」を登場させて詩を作るという課題に取り組んだ。
子どもたちは想像を膨らませ、出来上がった作品を次々に発表した。「パンダ」と「んだ」に加え、「パンダ」と「パン」で韻を踏んだ作品もあり、ラップのような感覚を味わった。ねじめさんは「約束事を決めて言葉を作ると、詩に近くなる。制約によって面白い言葉がどんどん生まれてくる」と話す。リズムに乗るようアドバイスし、声に出して読むことで言葉がぴたっと合っているかどうかが分かるとした。
中橋花さん(高陵小4年)は「詩を聞いていたら歌のようにも思えてくる」と魅力を感じ、阿部祐人さん(同)は「詩を作るのは楽しい」と達成感を味わった様子。釜谷充希さん(高陵中3年)は「自由に表現することを学んだ。これからもいろいろなことを積極的に表現したい」と話した。
ねじめさんは中学生の時、商店街で店番をしている自分を中途半端だと感じ、「宙ぶらりん」と詩に書いたことを振り返った。人生で最初の詩的な言葉だったという。「詩は書いた本人に元気を与える。次のいい言葉を見つけたくなる」と語る。「『あと2分』という気持ちにならないと詩の言葉は出てこない。どうしようと思っているうちにぽっと出てくる」と実感を込め、「凡庸であってはいけない。普通に使っている言葉は使わないという意気込みが大事」と呼びかけた。
ねじめさんの作品 「パンダ ここなんだ」
パンダ オリンピックでとんだんだ
パンダ スキージャンプだ
パンダ さんだんとびだ
パンダ ぼうたかとびだ
パンダ トランポリンだ
パンダ ぜんぶキンメダルだ
パンダ キンメダルとりすぎたんだ
パンダ キンメダルしんせきにもあげたんだ
パンダ キンメダルもういいんだ
パンダ けんだまやりたいんだ
パンダ けんだませかいいちなりたいんだ
パンダ けんだまもせかいいちになったんだ
パンダ ごほうびもらったんだ
パンダ けんだまロケットもらったんだ
パンダ けんだまロケットにのったんだ
パンダ おひさまをおいこしたんだ
パンダ つきをおいこしたんだ
パンダ スピードがあがってきたんだ
パンダ じんこうえいせいもおいぬいたんだ
パンダ スピードがあがってきたんだ
パンダ みえなくなったんだ
パンダ どこかへいったんだ
パンダ どこだ どこなんだ
パンダ ここだ ここなんだ