看護経験エピソードに

 富山県立中央病院の看護師、山口多香子さん(44)が、8月10日の「ハートの日」に合わせて心温まるエピソードを募った「ハートの日大賞」で、最優秀賞に選ばれた。10年ほど前に担当していた膵臓(すいぞう)がんの患者の不安に寄り添い、信頼関係を築いた経験をまとめた。「自分の気持ちを話すことで気持ちを共有できた」と振り返る。

 患者は緩和ケア病棟にいた当時70代の男性。ただ、担当した当初は、1人で泣いていた患者に「大丈夫ですか」と声をかけても何も話してくれなかったという。先輩の看護師に相談した上で「自分が力になれず、苦しく思っている」と率直な気持ちを伝えたところ、徐々に病を抱えた苦悩を打ち明けてくれるようになった。「心を開いてくれたようだった」と語る。

 患者はその後亡くなったが、自分の気持ちを話して相手と打ち解けたことが、看護師を続ける中で重要な経験になった。自身の気持ちを整理して表現したいと、2024年度の「ハートの日大賞」への応募を思い立った。

 最優秀賞の知らせは昨年末に届いた。驚くとともに「職場の人も喜んでくれた」とし、「看護には心と心をつなぐコミュニケーションが大切だと改めて感じた」とも話す。

 同大賞は、キャリアデザイン・インターナショナル(東京)の企画で、24年度のテーマは「職場での心温まるストーリー」だった。

 山口さんの授賞式は8月5日、東京で開かれる。