富山市のハンドニットデザイナー、しずく堂さんの作品展が25日、県民会館1階の「D&DEPARTMENT TOYAMA」で始まった。病気の治療のため月末で作家活動を休止することから、これまで雑誌やテレビなどで発表してきた作品100点以上を一堂に展示。県内外から駆けつけたファンが、見て触って心を癒やしている。31日まで。
しずく堂さんは、2009年からハンドニットデザイナーとして、ニット雑誌や書籍で作品を発表するほか、毛糸メーカーにデザインを提供したり、全国各地でワークショップを開いたりしている。19年に治療法が確定していない希少がんを患い、治療に専念するため、このほど作家活動を休止することになった。
これまで手がけた作品はどれも思い入れがあり、ほとんど手元に残していたという。「個展をきっかけに多くの人に手に取ってもらい、使ってほしい」というしずく堂さんの思いを受け取り、友人で料理家の山田香織さん(砺波市深江)が中心となり、作品展を企画した。
会場では、靴下やバッグ、帽子などの小物からミトンやポットカバー、コースターといった生活雑貨を展示販売している。来場者は色鮮やかできめ細やかな模様をじっくりと見つめ、心地の良い肌触りに浸った。
大阪府豊中市から訪れた尾山由紀さん(55)は「ずっとお手本だった作品を実際に見ることができてうれしかった」、鹿児島市の介護職、茂呂睦子さん(57)は「ワークショップに参加した時、みんなで編む楽しさを知ることができた。職場でもやれたらいいな」と話した。
制作途中の作品も並び、来場者が引き継いで作ることができる。京都市から訪れた上野山さくらこさん(40)は編みかけのアームカバーを選び「いつか編んでみたい模様だった。頑張って完成させたい」と語った。砺波市の伊東優理さん(37)は「編みかけだけれど、手元にあるだけで満たされる。編まずに、このまま残しておきたい」と笑顔を見せた。