トナミホールディングス(HD)の高田和夫社長と日本郵便の千田哲也社長は16日、同HDに対する株式公開買い付け(TOB)が成立したことを受け、都内で記者会見した。トラック運転手の不足やデジタル化に伴う物流量の減少など、業界を取り巻く事業環境が厳しさを増す中、両氏は「シナジー(相乗)効果を発揮することで両社が成長できる。物流課題の解決にもつながり、社会的意義も大きい」と説明。高田社長は新たに発足する「JPトナミグループ」として将来的に売上高2千億円、営業利益140億円を目指すと強調した。
2月下旬にTOB実施を発表後、両社の経営トップが会見するのは初めて。
トナミHDの高田社長は、協業の背景を「2024年問題で輸送戦力が縮小するなど物流業界が難局を迎える中、上場維持のメリットが低下していた」と説明。「外部の経営資源を活用することで中長期的な成長が見込めると考えた」と語った。公共性が高い日本郵便と親和性があり、協業によって強靱(きょうじん)で持続可能な物流インフラを構築できるとして「ベストパートナーと判断した」と強調した。
日本郵便の千田社長は、家庭まで配達するきめ細かい同グループの宅配網と、トナミHDの強みである幹線輸送ネットワークを組み合わせることで、サービス向上を期待できると説明。「物流の多様なニーズに対応でき、顧客に新たなサービスを提案できる」と語った。
トナミHDの24年3月期の連結業績は、売上高に当たる営業収益が1420億7200万円、営業利益は57億7400万円。27年3月までの3カ年の中期経営計画では、営業収益1800億円、営業利益95億円を目標に掲げている。
高田社長はJPトナミグループとしての業績目標も含め、燃料費の高騰などの厳しい事業環境を念頭に「高い目標値」としながらも、シナジー効果を発揮することで「実現できる」と話した。
TOBは日本郵便、トナミHDの現経営陣、創業家の3者が出資する会社「JWT」が2月27日~4月10日に実施。買い付け対象の株式のうち87・24%が応募した。残りの株式も含め、買い付けの総額は約926億円となり、日本郵便が8割を負担する。
トナミHDはJWTの完全子会社となり、東京証券取引所プライム市場の上場は廃止となる。JWTは7月に「JPトナミグループ」に社名を変更する予定。26年6月をめどにJPトナミグループとトナミHDが合併する。