富山県魚津市新金屋の銭湯「平成松の湯」の店主で、プロカメラマンの顔を持つ黒崎宇伸(たかのぶ)さん(57)は、家族写真や仲間との記念写真の撮影場所として、自身の店を活用している。洗い場で背中を流し合うポーズや、脱衣所で並んで牛乳を飲む格好など、依頼主と話し合って遊び心のある一枚を手がけ、評判を集める。写真館や銭湯がまちなかで姿を消しつつある中、思い出づくりに一役買っている。
「平成松の湯」は黒崎さんの祖父が開設し、100年近くの歴史がある。平成に入り、リニューアルした。
黒崎さんは、昨年に英グリニッジ天文台が主催する世界最高峰の天体写真コンテストで日本人最高位の準優勝に輝くなど数々のコンクールで受賞を重ねる。ミラージュランドの大観覧車など見慣れたモチーフのあらゆる表情を収め、地元の魅力を発信してきた。仕事の合間を縫って手がけた作品は営む銭湯のロビーに展示し、来店客に親しまれている。
スタジオとして活用を始めたのは一昨年から。常連客の鍛野定雄さん(88)とその家族から撮影を頼まれたのがきっかけだ。海外に住む孫の金三津龍人さん(34)が帰国するのは年1回程度。つながりを確かめられるようにと、集まって写真に残すことを思い付いた。場所として選んだのが、なじみの「平成松の湯」だった。依頼を快諾した黒崎さんは、浴場や脱衣場を使うことを提案し、ユニークな1枚に仕上げた。
金三津さんは「わが家の一部のような場所なので、自然体で撮ってもらえた。写真を見ると、家族の存在を近くに感じることができる」と話す。
黒崎さんはこのほか、取材を受けた縁で、魚津高校放送部の生徒たちの記念写真も撮った。「家族や友人同士で写真に納まると、コミュニケーションが生まれる。場所が銭湯というのは新鮮で面白いし、情景が思い出として残りやすい」といい、「撮りたい方はぜひ訪ねてもらい相談してほしい」と話している。