オウム真理教の教祖・麻原彰晃(本名・松本智津夫)元死刑囚が逮捕されたのは、1995年3月20日に教団が起こした地下鉄サリン事件から2カ月後、5月16日だった。子どもたちはテレビにくぎ付け。「うそだ」「でっち上げだ」と騒いだ。
教団施設「サティアン」から救出された4~14歳の子どもたち53人が、山梨県中央児童相談所に保護されてから1カ月。ちょうど前日からテレビ、新聞、ラジオに触れるのを解禁したばかりだった。
だが、騒いだのはどこか形式的。翌日には急にトーンが下がり、遊びながら、横目でニュースを見る程度だった。自然な子どもらしさを取り戻しつつあった。(共同通信=味園愛美)
▽変化
元児相職員の保坂三雄さん(78)が、当時を振り返る。
保護から1週間たつと、子どもたちの様子に変化が見られました。1人で遊んでいたのが、野球やサッカーなど集団で遊ぶようになりました。職員に対しても、とげのある言い方がなくなり、表情が和らいで笑顔を見せるようになりました。私に対しても「保坂」と呼び捨てだったのが、1カ月ほどして初めて「先生」と呼んでくれたのはうれしかったです。
▽教祖逮捕に「うそだ」
初めは、オウムについての報道は刺激が強すぎると判断し、見せないようにしていました。保護から1カ月後の5月15日、社会復帰に向けてテレビ、新聞、ラジオを解禁しました。教祖の麻原彰晃(本名・松本智津夫)元死刑囚が殺人容疑などで逮捕されたのは、翌16日のことでした。
子どもたちはテレビにくぎ付けで「うそだ」「でっち上げだ」と騒ぎました。でも、それはどこか形式的で、翌日には急激にトーンが下がりました。遊びながら、横目でテレビを見る程度でした。
それまで連日、教団から児相に押し寄せて、警察と押し問答を繰り広げていた信者たちも、逮捕の翌日から姿を見せなくなりました。
▽甘え直し
小学校中学年くらいの子までは、赤ちゃんのように甘えるようになりました。