富山県氷見市の朝日丘小学校長などを歴任した同市諏訪野の農家、澤武俊一さん(63)が4月下旬、市内に子ども食堂を立ち上げ、低所得世帯やひとり親家庭の子どもの支援に乗り出す。開設に向けた準備として調理師免許を取得できる雄峰高校専攻科に通い、3日に卒業した。澤武さんは「徐々に活動を広げて地域の交流の場にしたい」と意気込む。
澤武さんは射水市と氷見市で教員を38年間勤め、2023年に退職。在職中は経済的に恵まれなかったり、ネグレクト(育児放棄)を受けたりしている児童らを目にしてきた。給食時に配慮するなどして面倒を見たが、「学校で目が届くのは平日だけ。公教育では限界がある」と感じていた。
退職後、本格的に支援に取り組もうと、子ども食堂の設立を目指した。運営に調理師免許は必要ないものの、「せっかくならおいしい料理を味わってほしい」と、23年4月に雄峰高校専攻科調理師養成課程に入学。父から受け継いだ170アールの田んぼで米を育てながら、平日は毎日、富山市にある高校に通った。
若い世代と席を並べた2年間。学んだのは「料理の技術は当然だが、一番は安心安全の意識」と言う。衛生管理の方法として、90秒の手洗いや食材ごとに調理台を分けることなどをたたき込まれた。
子ども食堂は自宅近くの氷見市諏訪野公民館で、月1、2回の開催を計画。澤武さんが育てた富山米「富富富」や、地元で取れた野菜などを使った料理を提供する。4月中旬には試食会として同公民館に地域住民を招き、カレーを振る舞う。徐々に規模を拡大し、地域食堂への格上げも考えている。
諏訪野地区をはじめ周辺地区は能登半島地震で大きな被害を受けた。校区である比美乃江小学校サブグラウンドには災害公営住宅が建設される。市民生委員児童委員協議会長も務める澤武さんは「将来的に地域食堂になれば、公営住宅の入居者と地元住民、子どもたちが交流できる場所になる。子どもたちに料理を教えて自立に向けた支援もしたい」と語る。