富山県内で初めてチューリップ球根を栽培し、「チューリップの父」と呼ばれた故水野豊造(ぶんぞう)=庄下村矢木(現砺波市)出身=を題材にした影絵劇「チューリップがやってきた~たった10個の球根から~」が2日、同市出町子供歌舞伎曳山会館で初めて上演された。来場者は光と影で表現された幻想的な世界に浸りつつ、幾多の困難を乗り越えた郷土の偉人の功績に思いをはせた。
影絵劇は市ゆかりの偉人を分かりやすく伝えたいという同館の依頼を受け、米国出身の影絵師、ジャック・リー・ランダルさん(富山市)と日本画家の広田郁世さん(射水市)が制作。砺波平野を開拓した奈良時代の豪族、利波臣志留志(となみのおみしるし)を取り上げた劇に続く2作目となる。
今作は、水野を扱った子ども向けの伝記を下敷きにした。貧しい暮らしの中でチューリップ球根の栽培を始め、花を咲かせるまでの歩みや、第2次世界大戦で食料栽培が優先される中、球根をひそかに保存し守ったエピソードなどを約30分間の劇に仕立てた。
2人と琵琶奏者の坂田美子さん(千葉)、箏(こと)奏者の稲葉美和さん(東京)でつくる演奏グループ「KAGEN」が上演した。水野の生涯が幽玄な音楽とともに巧みな影絵で表され、来場した約100人が見入っていた。劇に先立ち、影絵体験もあった。
ランダルさんは上演後、「大変な暮らしの中でもあきらめず、美しいチューリップを咲かせたいちずな思いを感じ取ってもらえればうれしい」と話した。