富山市出身の男性が、東京港区・新橋で19年間経営してきた飲食店がビルの取り壊しに伴い閉店。装いも新たに18日、古里の富山市太田口通りで移転オープンする。店主の石田雄三さん(66)は「ぼぉっとしていられる落ち着いた店に」と、静かに来店者を待つ。
石田さんは慶応大卒業後、CM制作会社に就職。大手企業のCMを多数手がけたが、47歳で従来から興味があった飲食店「bar&kitchen いろり村」を開業した。場所は、飲食店の激戦区、新橋のビルの2階。約30平方メートルのこぢんまりした店だったが、富山名物の昆布締めや黒作り、氷見うどん、自家製の燻製(くんせい)などが人気を集め、常連客で繁盛していた。
しかし老朽化に伴い、ビルが取り壊されることになり昨年12月に惜しまれつつ閉店。実家に1人で住む母親も92歳と高齢になったことから思い切って古里にUターンすることを決めた。店は大正時代から続く実家の帽子店を改装。10席のカウンター席とテーブル席8席と決して広くはないが、壁面には、これまでトランクルームにしまってあった村上春樹さんらお気に入りの本と、大好きなビートルズなど洋楽のレコードをずらりと並べ知的な雰囲気に。営業中は自由に読書をしたりレコードを聴いたりできることから、従来の店名の後に「with books、music」と付けた。
営業時間は午後5時半~同11時の予定で、ワインや地酒などのお酒が、燻製や温野菜料理とともに味わえる。石田さんは「(Uターン)を母親も喜んでくれた。当面は手探り状態だが、アナログな感じの店にできれば」と話している。