セツさん「達成感が元気の源」

 県内で新聞ちぎり絵作りを楽しむ人が増えている。今夏に奈良県の木村セツさん(95)の個展「95歳セツの新聞ちぎり絵原画展」が開かれたのをきっかけに始めた人も多い。本紙レジャー・ホビー面で始めた「あなたもセツさん 新聞ちぎり絵に挑戦」には、県内外から数多くの作品が寄せられている。気軽にできる趣味として浸透してきているようだ。(田中智大)

 「セツさんの作品展を見て私もちぎってみた」「孫と2人で作って楽しい時間を過ごせる」。「あなたもセツさん」の応募者からはこんなコメントがあふれる。朝日町南保の越間幸栄さん(81)も新聞ちぎり絵を楽しむ一人。「家でできる趣味にちょうどいい。思わず夢中になって作っている」と話す。

 6月から1カ月間、富山市民プラザで開催された「95歳セツの新聞ちぎり絵原画展」は、北陸地方では初となる大規模個展とあって、会期中に1万人以上が来場した。SNS(交流サイト)で話題となった「ブロッコリー」や、富山展に合わせた新作「鱒寿司(ますずし)」など、セツさんが90歳になる頃に始めてから現在までの作品を展示。新聞紙とは思えないほどの精巧さと温かみのあるちぎり絵からは生きる喜びが伝わり、95歳になっても衰えることのない旺盛な創作意欲が多くの人を勇気づけた。

 各地の公民館では新聞ちぎり絵教室が開かれるようになり、北日本新聞カルチャーアーバン校でも教室が新設された。

 8月にスタートした「あなたもセツさん」では「スイカ」「おわら風の盆」など季節に合わせた下絵を提供している。これまでに3歳から90代までの約200点が寄せられた。囲碁の石をスイカの種に見立てたり、株価の数字を使って魚のうろこを表したりと、新聞を自在に使った力作が届いている。

 来月で96歳を迎えるセツさんは、富山での作品展について「皆さんに作品を見てもらい、どれだけ幸福感と元気をいただいたことか計り知れない」と振り返った。愛好者の応募作品を見て、「これすごい」と思わず何度も言ってしまったという。「皆さんの意気込みと、楽しんで作られているという空気感が伝わってくる。わくわく感と達成感が元気の源になるよう、さらに挑戦してほしい」と語った。