11月17日に投開票された兵庫県知事選。パワハラなどの疑惑を受けて失職した斎藤元彦氏が再選され、2期目をスタートさせた。この「復活劇」を後押ししたのが交流サイト(SNS)だ。斎藤氏も「SNSは大きなポイントだった。草の根的に政策や動画を発信して拡散いただいた」と振り返っている。

 一方、次点で落選した稲村和美氏は選挙戦で誤情報を拡散された。敗戦後には「斎藤氏と争ったというより、何と向き合っているか違和感があった」と語っている。多くの有権者が情報をインターネットから得る現状を考えれば、利用者が多いX(旧ツイッター)やユーチューブ動画などにおける扱われ方が候補者の得票に多かれ少なかれ影響した側面は否定できない。

 では、実際にSNSで何が起こっていたのだろうか。手がかりを探るため、Xで兵庫県知事選や候補者に言及したポスト(投稿)を解析した。すると、斎藤氏が「ピンチ」を迎えた日に擁護の声が拡大し、稲村氏を巡る「デマ」(稲村氏)が告示直前から広がるなど、知事選を巡る「SNS世論」の実態が見えてきた。(共同通信・兵庫県知事選データ分析班)

 ▽関連ポスト上位に「パワハラ」「デマ」、稲村氏巡る誤情報も多数

 X分析にはNTTデータのSNS分析サービス「なずきのおと」を使用した。兵庫県知事選や斎藤知事に言及したポストに加え、「知事選」と併せて候補者7人それぞれに触れた投稿も対象とし、計10種類以上の調査を実施した。各調査で対象期間中に投稿された日本語ポストを全量取得し、1日当たり最大約1万件を抽出。使われた語句を日ごとに上位100位まで検出した。

 まず、知事選に関するワードについて紹介する。告示日の10月31日から、選挙戦最終日である11月16日の17日間を対象とした。期間中のポスト計約224万件から、1日当たり約1万件を抽出した。

 その結果、「#さいとう元知事がんばれ」など、斎藤氏を応援するフレーズが連日上位に登場。斎藤氏ほどではないが、稲村氏を応援する語句もあるし、斎藤氏応援のため出馬し、動画配信などで「援護」した政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏の名前もあった。

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