富山ゆかりの作家、宮本輝さんが選者を務める第59回北日本文学賞は8月31日に応募を締め切り、国内外から880編が寄せられた。地元選考委員による1~4次の選考で絞り込まれた最終候補作の中から、宮本さんが入賞1編(正賞・記念牌(はい)、副賞100万円)と選奨2編以内(記念牌、副賞30万円)を選ぶ。
北日本文学賞は新鮮で個性豊かな作家の発掘を目指し、北日本新聞社が1966年に創設。故丹羽文雄さんが初代選者となり、第3回から故井上靖さんが引き継いだ。
第26回からは、富山を舞台にした小説「螢川(ほたるがわ)」などで知られる宮本さんが選者を務めている。文壇を代表する作家による単独選の魅力が全国の文芸愛好家に支持され、短編の公募文学賞としては全国トップクラスの人気を誇る。
応募総数は昨年より89編減ったものの、今回も全都道府県から作品が寄せられた。多い順に東京143編、大阪69編、神奈川65編で、富山は4番目に多い59編だった。海外は米国とフランスから各3編、英国から2編、ドイツから1編届いた。
応募者の年代は幅広く、最年少は17歳の高校3年生で、最高齢は103歳だった。世代別では60代が最も多い241人、次いで70代が222人で、全体の過半数を60代以上が占めた。10代は昨年から微増し6人、20代は減って46人だった。
職業別では定年退職後の60~70代を中心に無職が297人で最も多く、会社員が100人、主婦・主夫が78人と続いた。
地方の文芸同人誌で活動する書き手のほか、地方新聞社や自治体などが主催する公募文学賞の入賞者など、創作経験を積んだ実力者も少なくない。過去の北日本文学賞の選奨受賞者や最終候補者の再挑戦も見受けられた。
地元選考は既に始まっている。選考委員によると、今年は死や病気を扱った作品が多い傾向にある。心の病や障害のある人々の生きづらさを訴える内容の物語も目立つという。
マッチングアプリやSNS(交流サイト)など、以前にはなかった形での恋愛を描いた作品や、能登半島地震を描写した作品も見受けられ、地元選考委員の一人は「現代ならではの題材だと言える」と話している。
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1~4次選考の結果は11月から随時、最終結果は来年1月1日に本紙と本社の総合情報サイト「webunプラス」で発表する。
