富山市海岸通に生産拠点を構えるソアロンは、植物由来の半合成繊維・トリアセテートを世界で唯一手掛けるオンリーワン企業だ。三菱ケミカルから独立し、新たなパートナーと歩み始めて1年。坂本宜士社長が今後の事業展開と成長戦略について語った。

株式会社ソアロン
代表取締役社長 坂本宜士氏
さかもと・たかし 1968年、大阪府生まれ。同志社大卒。92年に三菱レイヨン(三菱化学、三菱樹脂との統合により2017年から三菱ケミカル)に入社。24年にトリアセテート繊維事業部長。25年3月から現職。
オンリーワン繊維を世界に
―昨年3月に三菱ケミカルの事業再編の一環で、トリアセテート事業が、繊維と工業製品の専門商社GSIクレオス(東京)に譲渡され、新会社ソアロンが設立された。
トリアセテート繊維は天然パルプと酢酸を反応させた原料から製造する半合成繊維だ。美しい光沢や適度な吸水性、速乾性などが特長で、主に高価格帯の婦人服に使用されている。富山工場ではブランド名「ソアロン」として、1967年から製造を始めた。取り扱いが難しく、競合他社が撤退していく中、富山工場は長年培ってきた技術と、その糸を生地にする北陸の産地に支えられて成長し、トリアセテート繊維を生産する世界唯一の工場となった。今や「トリアセテート繊維=ソアロン」であることから、ブランド名をそのまま社名にした。

―トリアセテート繊維はサステナビリティの観点からも注目が高まっている。
衣料品のハイブランド各社は環境負荷の低減に対する意識が高く、取引先に対する要求も厳しい。当社は植物由来の原料を使った繊維であることをアピールするだけではなく、管理された森林で伐採した木材のみを使用するなど先んじて対応を強化。製造工程における溶剤の回収とリサイクル、省エネ化といった取り組みも行っている。
トリアセテート繊維は表面にランダムな溝があり、断面は菊型になっている。これが落ち着いた光沢と機能性を生んでいる。軽くて柔らかく、しわになりにくいため洗濯も可能。黒に染めた時の光沢が優れていることから中東の民族衣装・アバヤにも多く使われている。これまでは約8割が婦人服向けだったが、他の分野にも用途を広げていきたい。
M&A効果に手応え
―GSIクレオス傘下に入って1年。効果をどう感じているか。
M&Aによるシナジー効果は大きい。GSIクレオスは繊維分野を主力としており、トリアセテート繊維の将来性を高く評価している。商社としてのネットワークで販路を開拓しているほか、靴下や肌着、スポーツウエアといった新たな分野に用途を広げるためのプロジェクトを始めている。
大手繊維メーカーにトリアセテート繊維を提供し、機能性の高い生地を共同開発する計画もある。これまではライバル関係にあった企業とも、独立したことで協業しやすくなった。トリアセテート繊維の課題である強度を補うような新商品も生まれると期待している。ソアロンの素晴らしさを知ってもらい、扱う人が増えることによって販売量は必ず増える。GSIクレオス創業100周年、繊維ブランド「ソアロン」誕生60周年となる来年には、しっかりした成果を示す。
―「ソアロンに関わる人々を大切にし、ソアロンを装う感動と喜びを世界に広げる」を理念に掲げる。
富山で生産するオンリーワンの繊維を世界中のより多くのみなさんに使っていただき、その技術や価値が将来にわたって継承され、愛され続けてほしい。そのためには生産技術の向上や新商品の開発、販路の拡大をはじめとする進化と成長が欠かせない。使命感をもって取り組んでいく。
企画「LEADER’S VISION」は、県ゆかりの企業のリーダーたちに、これからの成長戦略と富山への思いを聞く。
