今年1月、ドジャースに入団した佐々木朗希をめぐり、「最終面談」に大谷翔平も同席したと、移籍先決定の舞台裏を詳細に伝え、話題を呼んだニュースを覚えている人もいるだろうか。

 報じたのは、米新聞大手ニューヨーク・タイムズ(NYT)が2022年に買収したスポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」だ。メディアを取り巻く環境が大きく変わる中、速報より独自の戦術分析や長文インタビューなど深掘りを重視した記事でデジタルの有料購読者を引きつけている。

 NYTの資料によると、単独購読だけでなく、料理やゲームなどと組み合わせたパッケージ契約でジ・アスレチックにアクセス可能な購読者数は昨年12月末時点で583万人に増加した。ジ・アスレチック単体の今年第1四半期の総収入は4760万ドル(約70億円)。収益の多角化戦略にも乗り出し、新時代のスポーツメディアを模索する動きとして注目されている。(共同通信=田村崇仁、谷口輝世子)

 ▽記者400人、購読収入18・5%増

 ジ・アスレチックは2016年に設立された。現在では、400人以上のフルタイム記者が在籍し、北米47以上の市場でプロチームや大学スポーツ、イングランド・プレミアリーグの各クラブなどを幅広く取材。デジタル特化型のサブスクリプション(定額利用)で各地域の情報発信から世界をつなぐスポーツ報道に力を入れる。

 米大リーグや米プロフットボールNFL、米プロバスケットボールNBA、北米プロアイスホッケーNHLなど主要リーグは専門記者が担当する。

 収益で見ると、ジ・アスレチック単体の2025年第1四半期の総収入は4760万ドル(約70億円)で、前年同期比で27・9%増加した。購読収入も前年同期比で18・5%増え、デジタル化で躍進するNYTとの相乗効果が出ている。

 ▽量より質、ポッドキャストも積極的

 米国で地方紙の販売部数が苦戦する中で成長しているのはなぜか。

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