若手作家が富山県滑川市に滞在して創作活動に取り組む「滑川アーティスト・イン・レジデンス」が、国登録有形文化財の同市田中小学校旧本館で行われている。7月から始まった公開制作は最終盤を迎え、国内外の3人が風景や文化など肌で感じたことを表現に込めている。18日からは成果展がある。
不動産業のアトム(東京)が開く学生向けの公募展の一環で、滑川市内での入賞者の滞在や公開制作を昨年から実施している。ことしは武蔵野美術大3年の湯川爽海(さなみ)さん(24)=東京=と、東京芸術大大学院修了の水野渚さん(35)=神奈川=が参加。市内で恒例の「ランタンまつり」で縁のあるベトナムからも公募し、音楽家のハ・トゥイ・ハンさん(36)が来県した。それぞれインスタレーション(空間芸術)を手がける。
湯川さんはペースト状にした新聞紙で作ったかごや、鉄粉と海水を吹き付けてさびさせた五箇山和紙を用いる。展示場所は市出身の詩人、高島高(たかしまたかし)の生家である旧高嶋医院を選んだ。「私と高島さんが見た富山の景色を浮かび上がらせたい」と話す。
水野さんは県産米のもみ殻で作ったガラス玉などを展示し「緑や茶など土壌によって異なる色合いを楽しんでほしい」。富山が米騒動発祥の地であることから「生活を守ろうと起こした行動が、歴史上の大きな動きにつながる面白さも伝えたい」と意気込む。
ハンさんは滑川の印象について、自然が身近にあり、拠点とする田中小旧本館は木造校舎で、幼い頃の記憶を思い起こさせてくれると指摘。「伝統と現代、静けさと騒々しさといったコントラストを作品に落とし込んでいる」と話した。市内のベトナム出身者が制作に協力する。
公開制作は17日までで、成果展は18~26日。いずれも見学、入場は自由で、日々の様子はSNS(交流サイト)で発信している。