◎今週の一推しイベント

 【9日(土)】

 ▽「ヘラルボニー銀座店」(通年営業、火曜定休、中央区)

 知的障害のある作家が描くアート作品の商品化に取り組む会社「ヘラルボニー」(盛岡市)が、初の都内常設店舗を銀座に今春オープンし、話題を呼んでいる。障害のある作家が創作したアート作品を展示。作品を基にデザインしたファッションやライフスタイル商品を展開し、「障害に関する価値観が変わる」体験の場を提供する。

 同社は代表の松田文登さんと双子の弟崇弥さんが2018年に創業。自閉症の兄翔太さんに向けられる偏見や先入観を変えたいという2人の思いが起業の原点にあった。

 主に障害のある作家の展示を行う「るんびにい美術館」(岩手県花巻市)在籍の作家など国内外のアーティスト約250人と契約。生み出される絵画は、同じ図柄を色鮮やかに反復し、手のひらで繊細な色合いを表現するなど、異彩を放つ。それらの図柄をプリントしたブラウスやスカーフは美しく洗練されている。週末には、店内で創作する作家との交流の機会も。

 ディレクターの大平稔さんは「障害者とそうでない人との垣根をなくし、誰もが挑戦できる社会の土壌をつくりたい。日本を代表する繁華街銀座は、低く見られがちだった作家のアートの真の価値を評価してもらうのに最適な場所だ」と話す。

 海外での事業展開が評価され、今年6月にはフランスで世界的広告賞「カンヌライオンズアワード」のグランプリに次ぐ金賞に輝いた。「作家たちが個性を最大限発揮できる商品は何かを考え、世界中のさまざまな少数者たちが共感し連帯できるビジネスを追求していきたい」

 併設のギャラリーで11日まで、作家13人とミュージシャン・コーネリアスによる展覧会も開催。

 ○そのほかのお薦めイベント

 【9日(土)】

 ▽「ポップアップエキシビション Field of flowers」(~12日、伊勢丹新宿店、入場無料)

 フィンランドのファッションブランド「マリメッコ」を代表するフラワーデザインをあしらった限定アイテムを紹介するポップアップが、新宿で開催されている。

 国内外のデザイナー5人による新作の花柄をプリントしたテーブルウエア商品を展開。エルヤ・ヒルヴィさんがデザインした花柄をかたどったプレートや、鈴木マサルさんによる色彩鮮やかな花々を施したマグカップなど、個性豊かなデザインの数々に出合える。

 ▽「〇△□えほんのせかい+目黒区美術館トイコレクション」(~24日、目黒区)

 2冊の絵本の世界観を目黒区美術館所蔵の玩具コレクションなど約450点の展示と共に体感できる展覧会が、同館で開催されている。

 イラストレーター、絵本作家の及川賢治さんと竹内繭子さんによる「まるさんかくぞう」「いっこ さんこ」に焦点を当て、絵本の代表的なページを拡大して壁面に展示。丸と三角、四角の形と、ゾウなどを積み重ねた斬新なイラストを、シンプルな言葉と共に紹介する。

 ピース十数個をいろんな形に組み立てられるスイス・ネフ社のリボン形の積み木や、人や動植物の形をした木製アイテムで住みたい世界を作るドイツのおもちゃなど、さまざまな国内外メーカーの代表的な玩具も展示。“手に触れ考えて遊ぶ”ことの大切さを伝える。

 学芸員の重田正恵さんは「玩具には形や色の制約があるため、積み重ねたり組み立てたりするのにも工夫が必要。なんでも自由に描けるイラストレーションの間と行き来しながら、子どもたちに独創性と想像力を養ってもらいたい」と話す。

 おもちゃを手に取れるプレイコーナーでは、子どもと一緒に大人も積み木を組み立てて遊べる。「何歳になっても、絵本や玩具に触れることで世界が広がり豊かになる。“遊ぶ”ことを通して、人生を切り開く力を身につけてほしい」

 ネフ社創立者の活動を紹介する「クルト・ネフ生誕99年」も同時開催。

 ▽「真夏の刺激・涼感グルメSPICY&COOL」(~31日、渋谷区)

 猛暑の夏にぴったりの辛さと冷たさを味わえるグルメフェアが、表参道ヒルズで開催されている。館内の中華、和食、イタリアンなど9店舗が個性的な全12品を展開する。

 英国の情報誌「MONOCLE MAGAZINE」で、ハンバーガー専門店として唯一、世界のレストランベスト50に選出された「ゴールデンブラウン」も参加。フライドチキンにエビのうまみを生かした自家製のシーズニングをまぶした「キングオブスパイシーチキンバーガー」を提供している。韓国のコチュジャンに蜂蜜をまぜたソースや、ムラサキキャベツを使うなど、辛さだけでなく甘さやマイルド感も層にして挟んだ。

 日本人の繊細な食の感性を生かしたハンバーガー作りを目指し、2009年にオーナーの久富信矢さんの地元・表参道に進出。昨年3月には石川県珠洲市で能登半島地震の被災者にハンバーガー約850個を配布した。

 久富さんは「金沢や福岡など地方に足を運び、東京にはない食のセンスを研究している。地域の味を反映させた独創性が好まれているのかもしれない。今回のバーガーでも異なる味のハーモニーを楽しんでほしい」と話す。

 このほか、中華の「蔭山樓」はスペアリブをのせた激辛の排骨麺、インド料理「マザーインディア」ではカレーと相性のよいマンゴーラッシーなどを提供。

 ▽「クレヨンハウスの戦後80年特集」(~9月30日、武蔵野市)

 平和について考える絵本を吉祥寺のクレヨンハウス東京店で紹介している。

 反戦詩画人・四國五郎さんの「朗読詩 ひろしまの子」、沖縄戦を描いたたじまゆきひとさんの「なきむしせいとく」など約150冊を紹介。角野栄子さんら作家や詩人が寄せた平和へのメッセージも展示。絵本作家の田島征彦さんは「絵本で戦争を止めることはできないが(読んでくれる母子は)戦争に反対する大きな力になる」と記した。