富士フイルム富山化学(東京、佐藤充宏社長)は、患者負担を軽減できる新たな半月板治療の確立に向け、再生医療製品の製造販売承認を国に申請した。患者自身の膝の組織を採取して培養した幹細胞を損傷部に投与することで、症状の改善が期待される。同社が再生医療の製品を申請したのは初めて。
半月板は膝関節のクッションの役割を担う重要な組織。加齢やスポーツなどで受けた衝撃で半月板が断裂すると、膝の痛みや引っかかりが生じ、歩行困難に陥るケースもある。半月板損傷の手術は日本国内で年間約4万件実施されている。切除手術が一般的だが、半月板が失われることで膝の軟骨への負荷が大きくなり、「変形性膝関節症」が進行するなどのリスクが指摘されている。
富士フイルム富山化学が申請した製品は、骨や脂肪などの組織になる能力を持った「間葉系幹細胞」を活用。まず、半月板を損傷した患者自身の膝関節内側の滑膜から間葉系幹細胞を取り出す。血液で作った血清を使って細胞を培養し、損傷した部分に移植して半月板を再生させる。この治癒を促す幹細胞を「製品」としている。
治療法の開発者が所属する東京科学大が実施した医師主導治験で、有効性や安全性が確認された。その後、親会社の富士フイルムから委託を受け、2023年に患者19人を対象にした臨床試験を実施。膝の痛みや不安定性、引っかかりなどに関する主要な評価項目を達成し、効果が確認できたため、今年5月に製造販売承認を国に申請した。
変形性膝関節症は、潜在患者を含めて国内に約2500万人の患者がいると推定されている。今後、国との協議や専門部会の審議を経て、承認されれば発売となる。
富士フイルム富山化学は26年度内の発売を目指しており、「新たな治療の選択肢を提供できるよう、準備を進める」としている。